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新渡戸稲造 武士道4


16.最後に 武士道は甦るか

上記のように、武士道は「武士」と呼ばれた階級に属した人々により形成され、その心は日本人全体に受け継がれていった。しかし、明治維新によって「武士」階級は姿を消し、武士道が育まれた土壌は消え去ってしまった。では、武士道はこのまま消えてしまうのか?答えは「否」である。欧米諸国から「小さなジャップ」と侮られた日本人は、この数十年間で様変わりした。「小さなジャップ」が弱くか細い存在でないことは、先の日清戦争の勝利で証明されている。日清戦争の勝利は、近代軍備の力とか近代教育の効果とか言われているが、それらは事実の半分にも到達していない。武器だけで戦争に勝てるだろうか。学問だけで勝てるだろうか。何より大切なものは、民族の精神であろう。維新を進め、新たな近代国家「日本」を作り上げた原動力となった人々は、紛れもない「侍」たちであった。
武士道は、一個の独立した道徳として復活することはないかもしれない。はっきりとした教義を持たないからである。しかし、武士道が残してきた徳目の数々は、決して消え去ることはないだろう。西洋諸国の文化の中にも、武士道と同じ徳目が息づいているからだ。
時代が流れ、武士道は城郭・武具と共に崩壊した。既に、その役目を終えたかのようでもある。しかし、不死鳥は自らの灰からのみ甦ることができるのだ。武士道の栄誉は再び息を吹き返し、散った桜の花のように風に運ばれ、その香りは人々を祝福し続けるだろう。


<参考図書>
・武士道 「人に勝ち、自分に克つ強靭な精神力を鍛える」
(新渡戸稲造著 奈良本辰也訳・解説 三笠書房「知的生きかた文庫」)

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