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半島劇場/報道の自由を蔑ろにするクニ

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「おい、あのパネリストをやめさせろ」記者を恫喝する人物が首相になる韓国

ZAKZAK 2015.03.06
朴政権に「報道軽視」許す韓国マスコミの風土
番記者との昼食会で、報道機関上層部に顔が利くことをちらつかせ、疑惑報道をやめさせようとした人物が韓国首相に就任した。
昼食会の録音を報道に用いず、野党に提供したマスコミも非難を浴びた。
朴槿恵(パク・クネ)政権は名誉毀損などで次々、メディアを訴え、大統領の国内記者会見は年頭の1回きり。
韓国マスコミは「報道の自由」をないがしろにする政権と対峙する気概はあるのか。覚悟が問われている。

「電話1本、出演者降板」を誇示
韓国新首相に就任した与党セヌリ党の李完九(イ・ワング)前院内代表が首相候補に指名された後の1月27日、自身の事務所前に集まっていた若い番記者らに昼食会を持ちかけた。

テレビ局KBSが2月6日に報じたこの際の録音内容によると、この場で耳を疑う李氏の発言が飛び出した。

「『オイ、まずあのパネリストをやめさせろ。この野郎、早く。時間がない』と言うと、『いま、メモを入れて外させた』と。
俺が見たら(パネリスト)が外れていた」

テレビ局幹部に電話1本かけるだけで、出演者を降板させる力があることを、番記者らに誇示したのだ。

「上層部と俺は、話には出さないが、皆、関係がある。
『李局長、あいつはダメだ。やるの、やらないの?』」
との報道機関幹部とのやり取りも“再現”してみせ、自分はメディアの局長や部長らにも顔が利き、記者らの“生殺与奪”権を握っていることをちらつかせた。

李氏は
「そいつは、自分が切られることも知らない。
どうして切られるかも分からない」
と続けた。
その上で、自分に「傷」があっても記事にせず、協力するよう求めた。

李氏をめぐっては、自身と息子の兵役忌避疑惑や不適切な不動産投機、博士論文盗作疑惑など、次から次に疑惑が浮上し、首相任命案が国会を通るか、崖っぷちに立たされていた。

そんな中、若い記者相手に、これ以上、自分に不利な報道をすれば、「記者生命が終わる」と恫喝(どうかつ)したに等しかった。
長年、記者をしていると、取材相手から「あなたの社の上層部の誰それと知り合いだ」と告げられることがあるが、李氏ほどのあからさまな“脅し”は、日ごろからメディアをばかにしている態度の表れとしか言いようがない。

「なぜ日本にできて、韓国にできない」
「友人に大学をつくったやつもいるから、(メディア関係者を)教授にも総長にもしてやった」との李氏の発言を録音した内容もその後、野党議員が公開した。

批判は報道機関にも飛び火した。一連の録音データについて、韓国日報の記者が自社の報道に用いることなく、野党議員に手渡していたことが発覚したのだ。
最初にKBSが報じた録音データも野党議員から提供されたものだった。

李氏の傲慢なメディア観についてどう報じれば、問題提起できるかを、とことん突き詰めることなく、安易に野党議員に提供して問題を政局化させたのだ。

韓国日報は「取材倫理を大きく逸脱した」として、1面に謝罪と関係者の処分方針を掲載した。

韓国各紙は社説などで、李氏のメディア観とともに録音流出の経緯を非難したが、問題は一過性のものとして見過ごせるのか。

韓国の政治や社会とメディアが置かれた関係をみる上で、非常に参考になるものに、最近放映され、高視聴率を得たテレビドラマ「ピノキオ」がある。

駆け出しのテレビ局記者たちが、政治家や財界有力者による局の報道部門幹部への圧力でねじ曲げられた事件の真実を暴いていくストーリーだ。

主人公の一人は、嘘をつくと鼻が伸びるピノキオのように、嘘をつくと、しゃっくりが止まらなくなる設定となっている。
「嘘がつけない人間が記者として務まるのか」が一つのテーマで、韓国の根深いマスコミ不信が背景にあるようだ。

高校生ら300人以上の犠牲者を出した旅客船セウォル号沈没事故でも、誤報や意図的な報道が相次いだ。
日本のフジテレビが生存した高校生らの証言を基に詳細なドキュメンタリーを放映した後には、その内容が韓国にも伝えられ、インターネット上で、「なぜ日本の番組にできて、韓国のメディアにはできないのか」と嘆く声が上がった。

わが物顔の“署マワリ”
ドラマ「ピノキオ」には、「マワリ」という日本語由来の記者用語も登場する。新米記者が最初に警察署取材に配属され、昼夜分かたず、「ネタはないですか」と署の幹部らに聞いて回る場面が描かれる。

ただ、日本の報道機関で「回り」は、こういった「署回り」だけでなく、取材相手の通勤・帰宅ルートや立ち寄り先で、実際に来るかも分からないまま、何時間も待っていたりする「夜回り」を主に指す。

日本の「サツ回り」取材からすれば、署内で指をくわえてネタが来るのを待っている取材は「ぬるい」のだ。

記者(桜井)は、2009年11月に日本人観光客ら15人が死亡した釜山の射撃場火災を取材した際、現場前でじっと警察官ら関係者の出入りをウオッチし続ける日本のテレビクルーの姿を見た韓国人記者から驚かれた経験がある。
こんな骨の折れる取材、韓国人記者ならやらないというわけだ。

韓国側報道陣が現場検証も終わっていない射撃場内に撮影のため、ズカズカと入ろうとして、日本の総領事館の要請で「待った」が掛かったこともあった。
自分たちの「絵撮り」のためには、警察による「原因究明」は二の次だったのだ。

警察署の「刑事部屋」の外で幹部が出てくるのを待っていると、「韓国の記者は皆入っていっているよ」とも告げられた。
ドラマにも描かれているが、韓国の記者は、警察署内をわが物顔で歩き回り、幹部をつかまえては、聞きたいことを単刀直入に聞く。

逮捕された容疑者を取り囲み、報道陣が直接“尋問”する場面をニュースなどで目にしたことがあると思う。

これは韓国社会で記者の置かれたステータスの高さからも来ている。
韓国では、王朝時代から「文人」が最も高貴な人種とみなされてきた。
韓国では、メディア業界を「言論界」、報道機関を「言論社」、記者らメディア関係者を「言論人」と呼ぶ。
記者が堂々たる「文人」の一角に祭り上げられている。

事実を報じる「報道機関」ではなく、何かを論じる「言論社」と呼ばれることが、韓国社会のメディアの立ち位置を如実に表していると思う。

韓国の記者は「言論人」さま
記者は一時、韓国の大学で客員研究員をしていたが、学生たちから教授と同列の「記者先生」扱いされ、気分が悪くなかった。韓国人記者らは、授業中も関係なく、教授らにがんがん電話を掛けてきて授業を中断する教授も目にした。

“マスゴミ”と邪険にされるより、ちやほやされていいじゃないかと思われるかもしれない。だが、この甘えが韓国「言論界」の弱さも生む。

「ピノキオ」では、社会部記者が“カッコよく”描かれているが、韓国人記者によると、大半が地方や社会部の記者としてのドサまわりを早々に卒業して、政治部記者になることを目指すのだという。

「言論人」という呼び方が示すように、国家天下の「正邪」を論じたり、社会を「正しい」方向に啓蒙したりすることに大きな価値が置かれる。
「社会を指導する」と自任していることからいうと、政治家や政界とも親和性が強い。

逆に、社会部記者として現場一筋にたたき上げられ、ファクトを追及することにこだわり続ける記者が相対的に育ちにくい環境でもある。

「文人」優位社会にあって、政治家や公務員同様に、博士号などの学位取得を重視する記者も多い。李完九氏の「教授や総長にしてやった」との言葉もあながち嘘ともいえず、政治家の殺し文句にコロッとやられる土壌がもともとあるのだ。

ドラマ「ピノキオ」からして、恣意的な報道によって家族の名誉を奪われた男性主人公が、逆に記者になって真実を突き止め、復讐を果たす筋書きとなっている。単なる真実の追求より「こうあるべきだ」との「正義」が先に立つ点では、韓国の価値観に沿っているといえる。

視聴者がドラマに託したメディア像
一方で、韓国でマスコミ不信が募る中、事実に正直であろうと奔走する登場人物らの姿に共感して、このドラマが高視聴率につながった側面もまた、否定できないだろう。韓国国民は高尚な論をうんぬんするマスコミより、国民が知りたいファクトを届けてくれるメディアの姿を望んでいるはずだ。

朴槿恵政権は「報道はこうあるべきだ」との論理を振りかざし、メディアや記者を対象にした訴訟や告発を連発している。大統領自身の国内記者会見が年頭の1回だけという状況が、国民の知る権利に応えているとは到底いえないことは、誰の目から見ても明らかだ。

大統領、首相がそろって、ここまで「報道の自由」を軽視する政権を目の前にして“報じ甲斐”を感じ、闘志が湧かなければ、「ブンヤ」とはいえまい。
韓国のベテラン記者たちもまた、「ピノキオ」の主人公らのように「マワリ」を経験し、思い悩みながらニュースを追い求めてきたはずだから。

「言論人」としての高尚な論を振りかざすのではなく、現場を駆け回り、ファクトを突き詰めた末の韓国発のニュースをもっと見てみたい。
ドラマの中だけに終わらず、韓国のメディアを取り巻く閉塞空間を打ち破るため、韓国人記者たちの「記者魂」を見せつけてほしい。
韓国の読者・視聴者に限らず、隣国の同じ職業人として切に望む。

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