大阪市改革PTが試案提示
548億円削減で市民生活を直撃
産経新聞 2012.4.5 10:50
橋下市長「バブル期のぜいたくな住民サービス」のカットを強調
大阪市の改革プロジェクトチーム(PT)は5日、市戦略会議で、平成24~26年度の3年間で計約548億円の財政効果を見込む事業見直しの試案を提示した。
一般会計で1億円以上の443事業のうち、104事業の費用を廃止・削減する内容で、国民健康保険料や市立保育園保育料の減免対象引き上げにも踏み込んでいる。
試案は、橋下徹市政の財政再建策「市政改革プラン」をとりまとめるベースとなり、PTは今後、事業の必要性などについて各部局と折衝を進める。
橋下市長は「市民に負担をかけることになるが、バブル期の贅沢な住民サービスが残っている」として事業カットの必要性を強調したが、住民の負担増につながる項目が多く、協議の過程では反発や曲折も予想される。
PTは橋下市長が掲げる「ゼロベースのリセット」を主眼に試案を作成。
横浜、名古屋、京都、神戸の政令4市や大阪府内の他市と比較し、原則として大阪市独自のサービスを引き下げる形でまとめた。
このうち国保料は、市独自で行っている減免措置の廃止などを想定し、20億円あまりの削減効果を見込んだ。
同様に保育料も徴収免除対象を見直すことで、1億5千万円分が圧縮できるとしている。
試案は福祉分野にも切り込んだ。
敬老パス事業は、利用対象をJRや私鉄にも広げた上で、1人あたりの上限を年2万円とし、半額を自己負担とする案など3案を提示。
低所得層や高齢者世帯を対象とする上下水道の福祉措置は、廃止により約40億円が削減できると試算している。
各種団体への運営補助は原則25%の削減を反映。
橋下市長が全額カットを示唆した大阪フィルハーモニー交響楽団や財団法人・文楽協会についてもこの規定を充当した。
このほか、3年後の大阪都移行を見越し、市内24区にある区民センターや温水プールなどの施設を9カ所程度に絞り込むことも織り込んでいる。
一方で、契約関係などから、試案通りに実行しても24年度の削減効果は38億円にとどまる見通し。
7月の本格予算編成では、外郭団体改革などに切り込んだとしても「収入の範囲で予算を組む」という橋下市長の原則論は実現困難な見通しとなっている。
橋下市長、敬老パス 半額負担に…来年度にも
大阪市の橋下徹市長は1日、70歳以上の市民が無料で市営地下鉄・バスを利用できる「敬老優待乗車証」(敬老パス)制度を見直し、半額の自己負担を利用者に求める代わりに、JRや在阪の私鉄でも利用可能にする方針を明らかにした。
早ければ2013年度から実施する。
有料化で市の負担を抑え、将来にわたり制度を維持するのが目的だが、市民や市議会の反発も予想される。
この日、代表を務める大阪維新の会所属の市議が開いた集会で、「制度を維持するため(市民に)一定の負担を求める。皆さんの怒りを買う案だが、このままでは敬老パスをやめないといけなくなる」と語った。
敬老パスは約35万人が利用。市は運賃相当額年約80億円を肩代わりしているが18年度には交付者数は約41万人、市の負担額は年101億円に膨らむ見通し。他都市の制度は半額負担や所得制限のあるケースが多く、所得にかかわらず無料を維持しているのは全国の政令市で大阪市だけだ。
市幹部によると、見直し案では、パスを持つ高齢者に月ごとの利用上限額を設定した上で運賃の半額負担を求める代わりに、市域外のエリアを含めてJRや私鉄も利用できるようにする。
制度の運用を支えるため、JRや私鉄側にも一定の負担を求める考えだ。
市は、平松邦夫前市長時代の09年2月、パス利用者に利用上限額を年8万円にした上で、年3000円の自己負担を求める一部有料化案を公表したが、市議会の反対で頓挫。
橋下市長は昨秋の市長選で「敬老パス維持と私鉄への利用拡大」を公約に掲げて当選し、見直しを検討していた。
市は見直し案を市政改革プランに盛り込んで、市民の意見を聞き、6月中に案を決定する方針だ。
他市も有料化
高齢者向けの公共交通機関運賃の優遇策は他の政令市でも実施しているが、財政難で、本人負担を求める流れが進んでいる。
神戸市は1973年以降、市バスや市営地下鉄などに無料で乗れる敬老パスを70歳以上の市民に発行してきたが、08年10月から有料化。
市民税非課税世帯で本人年収が120万円以下の場合、上限付き無料乗車券を交付している。
市バスなどが無料となる「敬老乗車券」を70歳以上に発行していた京都市も、05年度から一部を除き、所得に応じて負担金を徴収している。
大阪市改革案:敬老パス半額負担
市民に悲鳴やあきらめ
毎日新聞 2012年04月05日
「半額負担は苦しい」「今のご時世、仕方ない」―― 。
敬老パスの利用者負担や地域施設の統廃合など、市民サービスに大なたを振るった大阪市の改革プロジェクトチーム(PT)の試案。
「応分の負担」を求められる市民の間には悲鳴やあきらめの声が交錯する。
「役所の金の使い方を改め、教育政策などの財源にする」と改革の意義を強調する橋下徹市長。
橋下流「グレートリセット」は市民の理解を得られるのか。
「これから出す方針は、すごい案になる。僕の支持率なんて一気に下がると思いますよ」。
PT試案がまとまりつつあった先月19日、橋下市長はそう述べた。
試案の中でも、特に意識していたのが敬老パスだ。
今月1日、代表を務める「大阪維新の会」の支援者集会では、敬老パスの半額負担案を突然披露し、来場者に賛否を尋ねた。
「一番斬新なアイデアで市民感覚を測った」と橋下市長は言う。
橋下市長、大阪市音楽団員36人配転認めず
「分限免職」
読売新聞 2012年4月6日
大阪市の橋下徹市長は5日、市が同日発表した施策・事業の見直し試案で「2013年度に廃止」とされた市音楽団の音楽士36人の処遇について、「今まで音楽をやっていた人を単純に事務職に配置転換するのは、これからの時代、通用しない。仕事がないなら、分限(免職)だ」と述べた。
1923年に発足した市音楽団は国内唯一の自治体直営の吹奏楽団で、市公式行事での演奏や有料公演、中高生らへの吹奏楽の指導などを行っている。
市は公演収入などを差し引いた運営経費や音楽士の人件費として年約4億3000万円(2010年度)を負担している。
市改革プロジェクトチームが公表した試案では、音楽団について「行政としては不要」としつつ、市が音楽士を職種の一つに挙げて正職員として採用してきたことから、「配置転換先を検討」としていた。だが、橋下市長は市役所内で報道陣に「音楽団には自立してほしい。分限(免職)になる前に自分たちでお客さんを探し、メシを食っていけばいい」と述べ、配置転換を認めない意向を示した。
地方公務員法では、分限免職は勤務実績不良のほか、組織改廃時にも適用できると規定。ただ判例では「整理解雇」には、
▽人員削減の必要性▽解雇回避の努力▽人選の合理性▽解雇手続きの妥当性――
の4要件が必要とされている。
橋下市長が3月に市議会に提案し、継続審議中の市職員基本条例案でも、この4要件を踏まえ、「分限処分の対象となる職員の選定にあたっては、配置転換により最大限の分限回避に努める」との規定が盛り込まれており、こうした手続きがないままに処分が行われれば、反発は必至だ。
大阪市改革PT試案
読売新聞 4月6日
橋下市長 「税金支出 バブル期のまま」
―― かなり市民に負担を求める内容だ。
橋下市長:
全国の自治体で税収が伸び悩んでいるのに、税金を使う方はバブルの絶頂期から変わっていない。
特に大阪市のサービスは手厚く、税収が減ったのに、住民サービスに手をつけられていない。
家計では、収入が伸び悩んでいるときは支出を絞り、贅沢を改める。
市政改革室に号令をかけ、同じような他都市と同じレベルに落とした。
標準レベルに落とさせてくださいと、市民に訴えていく。
―― 今年度の削減効果額は38億円。
一方で収支不足は535億円。
収入の範囲内で予算を組むのは難しいのでは?
橋下市長:
府知事として改革をした時もそうだったが、改革元年に全部のおカネは集められない。
改革案を固めれば、(当初は)多少の補填財源を使っても、次年度に向けて収入の範囲で予算を組むルールを守る。
道筋を示すことが重要だ。
数字を合わせるのが目的ではなく、他都市と比べてどうなのか、見直すことの方が本質的な問題だ。
収支均衡も目指し、既得権益化している事業は廃止して新しい政策にシフトする。
この作業を繰り返さないと地域の活性化はあり得ない。
『キャスト』 4月5日
ナレーション:
思い起こせば4年前、府知事就任会見で、「財政非常事態」を宣言し、すべての事業(府の箱モノや補助金など)をゼロベースで見直すとした橋下市長。
これと同じことを「市でもやる」という。
市民の意見や、議会などを経て、6月に最終決定される。
大谷昭宏(ジャーナリスト):
困るという方は沢山いると思うんですよ。
ただ、先日、被災地の方々のね、声を集めた本を読んでたんですが、その中で家族を亡くされた方で、お孫さんができたのかな…
政治家にお願いしたいのは、子供たちには夢と希望を残してほしいと。
残すのは借金ではないはずです、と。
そういうことを仰ってたのがすごく印象に残ってるんです。
どうしても、お年寄りの方、半額負担がイヤだというなら、それで子供たちに借金を残しても仕方ないのか、半額負担して子供たちに残す借金を少しでも減らすのか、ということを考えると、「半分は我慢してください」と、「一般の家庭と同じように切りつめてるんですよ」と…
私は大概、橋下さんの言うことには、ケンカ売ってるワケでもないんですが…(笑)、ただ、これに関しては、橋下さんが「伏して皆さんに理解していただきたい」と、いうのはわかる気がしますね。
高橋大作(サブキャスター):
今回、443事業を再検討して、104の事業を廃止・削減対象にしています。
橋下さん曰く、バブル期のような手厚いサービスから、他都市並みに戻すだけなんだ、ということなんですが、ただ、大阪市に住む者としては、かなり厳しい内容で、その一部を見てみますと――
・「国民健康保険料」
これまでは「低所得世帯への減免措置」もあったんですけども、見直し。
さらに、
「出産一時金」引き下げなどで、年間約20億円を浮かそうとしております。
・「敬老パス」見直しで、年間約50億円。
・「コミュニティーバス(赤バス)」も民間含め、再構築で約10億円浮くのではないか。
このほか、高齢者だけでなく、
・「新婚家賃補助」の新規募集停止で約23億円。
・「保育料」軽減措置見直しで約1億5000万円。
・「学校給食協会交付金」(食材配送料を保護者負担にすることで)約1億2000万円削減。
などのような、現役世代にありがたい制度にも今回、見直しを検討するということになってます。
ただ、これだけ削っても、大阪市は現在、毎年500億円の青洲が不足しているワケでして、これに対して橋下氏は、「さらなる人件費削減、外郭団体見直しもある」
と削減額上積みも示唆していました。
藤井誠二(ノンフィクションライター):
つまりは、官と民のバランスだと思うんですね。
外郭団体の見直し…今、70いくつかありますけど、そこを基本的に全廃するという橋下さんの方針を、ちゃんと順守してやる。
天下りも禁止するって話になってますよね。
その約束をちゃんと守る。
それと大阪市の職員を2015年までに1万9000人くらいまで減らすと。
これをキチンと実行すると。
〝民〟に痛みを求めるけれど、〝官〟もこれだけ切りますよ、と。
この両方をバランス良くやるというのが、今回、この見直しプランを、市民の方に納得してもらう一番大きな条件じゃないかな、と思います。