虎・能見、五回完全も六回悪夢「ストレス溜まる」快投のち、悪夢だ。パーフェクト投球を続けていた能見が突如崩れた。初安打された1-0の六回、あっさりと逆転を許した。普段、クールなエースも自らへの怒りを隠せなかった。「不運な当たり? ヒットはヒットやから。…あぁストレス溜まる!」六回先頭の宮崎に、やや詰まりながら左前へ運ばれた。完全試合もノーヒットノーランもなくなり、4万6865人のため息が聖地を覆った。ここから傷口が広がるとは、だれも想像していなかった。犠打で一死二塁とされると、代打・井手に右前同点打され、1-1に。なおも走者一塁。金城も右前打で一、三塁。二死後、モーガンのグシャッと音がした当たりは、二塁ベース方向への適時内野安打となった。さらにブランコにも1-3とされる中前打を浴びた。打たれるたびに走者がかえり、悲鳴に似た声が上がった。六回だけの5安打で3失点。中盤までは快挙すら期待され、連敗ストップを託されたエースだったが、5敗目(8勝)を喫した。
一回は3者連続三振で滑り出し、序盤はまさに完ぺきだった。四回二死満塁では自ら一、二塁間突破の先制打を放ち、ゲームを支配しかけていた。中西投手コーチは「あそこのワンチャンスだけ。きょうは良かった。七、八回ぐらいまで行ける内容だった」と首をかしげた。和田監督としても「五回までは完ぺきだったけどなぁ。自分で打った1点だけだったからね」と背番号14は責められなかった。エース級と投げ合うことも多く、これまでも援護を多く受けてきたわけではない。ストレスはある。だが、それがエースの証。だからこそ、能見は踏ん張りたかった。「打たれるのは問題ない。感じは良かった。スライダーの制球も良かった」下を向いているヒマはない。怒りもうっぷんもエネルギーとし、進まなければならない。 (長友 孝輔)バテ虎、振りまくって打開!水谷C荒療治予告振って振って振りまくれ! 阪神は12残塁の拙攻でDeNAに敗れ、痛恨の3連敗を喫した。3試合連続で「1得点」と、夏バテモードの打線について、水谷実雄チーフ打撃コーチ(65)は「とにかく振り込ませる」と明言。首位巨人とは4・5ゲーム差に開いたが、振って振って、どん底を打開する!!
勝負の夏場に聖地は砂漠と化した。のどの渇き激しい虎がオアシスを求めて、チャンスを作れども作れども、水一滴出ない…。9安打を放ちながら残塁12。3試合連続で1点しか奪えない打線の低迷は、気温が上昇するのに比例して、深刻さを増すばかりだ。「疲れ? そんなことは言ってられない。乗り越えないといけないところなんだから」屈辱の3連敗を喫した試合後、和田監督は語気を強めた。4番のマートンが一回一死一、二塁で二ゴロ併殺に倒れたことを皮切りに、あと1本が出ない。1点リードの五回無死二塁では、3番・鳥谷が二飛と進塁打さえも打てず。得点は投手の能見のタイムリーによる1点のみ。拙攻の連続は、虎党のストレスを増幅させるばかりだった。この窮状を、どのように打破するか-。答えを握るキーマンが、チームにいる。むしろ、こんな苦況を救うために今季、虎へと加わった水谷チーフ打撃コーチが対策を明かした。「ビジターでも場所があるんやから振るしかない。結果を出さないとアカンのや」振って、振って、振りまくれ-。結局、根性論かと聞こえるかもしれない。荒療治と響くかもしれない。だが、前田(広島)や福留(阪神)、中村(DeNA)、松中(ソフトバンク)らに多くのスイングを課すことで、名伯楽は大打者を生み出してきた。経験から弾き出した答えが「振りまくれ」-なのである。
昨季は7、8月に14勝29敗4分けと大失速。もう、その二の舞はごめんだ。今年も、8月は13-18日(広島、ヤクルト戦)の京セラドーム以外、すべて遠征となる。いわゆる夏のロード。正念場の戦いへむけて、ホームでは満足いく振り込みができるが、敵地では練習時間が十分に確保できず、限界がある。ならば-と早出の特打メニューで、同コーチは改善への道を探る考えだ。打線のなかにあって、マートンが球宴明けの4試合で13打数(17打席)1安打と大不振に陥った。指揮官は「1年のうちにそういう時期はあるから、マートンが悪いときは周りががんばらないといけない」と復調の兆しが見えない打線の奮起を促した。首位・巨人とは、これで4・5差に拡大。正念場を迎えた和田監督は「もう1回チャレンジャー精神でぶつかっていかないといけない」と帯を締め直した。振って振って振って、もう1度、上昇気流へと乗る。 (栃山 直樹)
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阪神1-4DeNA、13回戦、DeNA7勝6敗、27日、甲子園
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