“革命家”橋下徹市長の真実
転載元: 『SPA !』 “革命家”橋下徹市長の真実橋下市長を直撃取材!若者が政治動かす
1月4日の年頭会見で、本誌記者は橋下市長を直撃取材、市長は若者優遇政策(年金制度の積み立て方式への転換)を熱く語った。それは、年金制度などの世代間格差の恩恵を受ける高齢者の既得権を放置したまま、若者世代により大きな打撃を与える消費税増税に邁進する野田首相とは対照的だった―― 。―― 若者が希望を持つような「税と社会保障の一体改革案」についてですが、橋下:積み立て方式への転換」をまず増税前にやれば、世代間格差が是正されて消費旺盛な現役世代や将来世代にお金が回ると思いますが、いかがでしょうか?橋下市長 これはもう制度を一からつくり直すのかという話で、高度成長時代は「賦課方式」で現役世代に負担を負わせる、いわゆるネズミ講方式でした。どんどん現役世代が増えていっている時代はこれでよかった。しかし、この方式はどこかで破綻することを考えないといけない。だから「積み立て方式」に変えるというのは原理原則、当たり前の話なのですけれども、これをやると、選挙で票が入らない。【(事前)積み立て方式とは】あらかじめ保険料を若干引き上げておき、年金などの社会保障費の支払額よりも保険料の負担総額が上回るようにする制度。このシステムを導入することにより、黒字となった差額分が積立金として貯まっていき、高齢者の人口がピークを迎えた頃から、積立金を取り崩していく。これにより、保険料の支払額と受取額がほぼ同じになり、賦課方式の世代間格差(約9000万円)が約3000万円にまで是正される。―― 落選をしてでも若い世代のために積み立て方式をやるべきだという政治家、国会議員と連携していきたいとお考えでしょうか。橋下:僕は大阪市役所の首長で、それ(年金など社会保障制度改革)をやるのは国会議員です。ある一定の環境を整えても若者が政治に参加しないのだったら、「若者に不利な制度ばかりでもそれは仕方がない」という話。最後は自己責任になると僕は思っていますけれども、大阪市長として、若者が参加する気になってもらえるような仕組みを少しでもつくれたらと思っています。政治家だって家族を背負って生活があるわけですから、「落選してでも」というのはそう簡単ではないと思いますよ。そうであれば、まずは現役世代が投票に行って政治力を示すべきだと思います。今回の大阪市長選は若者世代が投票行動で意思表示をしたと思っています。恐らく大阪市役所所管の範囲内では、議員の方々も僕も市職員も、「若者世代には一定の配慮が必要だ」ということを考えたと思います。そういう意味では、現職の市長と職員組合の関係をきちんと適正化して、若い人たちが首長選挙に立候補するとか、そういう環境が少しでもつくれればいいと思っています。
ガレキ、税金浪費…橋下市長への疑問
「脱原発を訴えながら、なぜ放射能を含むガレキの受け入れを表明するのでしょうか?」そう語るのは、生活協同組合コープ自然派・ピュア大阪理事の黒河内繁美氏。黒河内氏はガレキ受け入れについて府側と交渉。府は環境省の「(ゴミ処理施設の)バグフィルターで99・99%のセシウムを除去できる」という見解を基に「問題ない」と主張している。しかし、山内知也・神戸大学教授(放射線物理学)は「バグフィルターで捕捉できるのは、塩化セシウムとして固体化している場合。高温のゴミ焼却場では、セシウムは沸点が低いため、ガス化してバグフィルターをすり抜けてしまうかもしれない」と指摘する。「仮に環境省の見解どおりだとしても、ゴミ処理場の排気量は膨大で、大量のガレキを燃やせばそれだけ放射能が周囲に放出されることになります」(山内教授)黒河内氏は「燃やしたあとの放射能を含む灰の処分も課題」と訴える。「海上埋め立て地・大阪湾フェニックスに埋め立てることが検討されていますが、環境省は放射能汚染物質に関しての海上埋め立て指針を示していません」。就任後の記者会見で、焼却で灰の中の放射能が濃縮されること、海での埋め立てで流出の恐れがあることを「全く知らなかった」と認めた橋下市長。今からでも黒河内氏らの声に耳を傾けるべきかもしれない。また、保育園の「待機児童ゼロ」目標も、橋下市政では逆効果になる恐れがある。NPO法人「しんぐるまざーず・ふぉーらむ関西」の大森順子事務局長はこう語る。「コスト削減を迫られる民営化で、サービスの低下を引き起こす可能性があります。保育園側が母子家庭の子供を敬遠するなど、本当に必要としている母親が利用できなくなるかもしれません」さらに、橋下市長自身の税金浪費も追及されている。市民団体「おおさか市民ネットワーク」のメンバーらは、1月12日、松井知事に対し「旧WTCビル(現・大阪府咲洲庁舎、大阪市住之江区)の購入・移転費で浪費した96億3000万円を橋下前知事に返還させろ」との住民訴訟を大阪地裁に起こした。原告の一人、ジャーナリストの西谷文和氏はこう憤る。「埋め立て地に立つ旧WTCビルは以前から老朽化が懸念されていました。しかし橋下氏は府庁舎の一部移転を強行。不安は的中し、昨年3月、遥か彼方で起こった東日本大震災で、旧WTCビルは350か所も損壊。既に費やした96・3億円のほか、耐震工事費に約130億円かかるとも見られています。橋下氏は『地震は想定外だった』と開き直っていますが、他人に向ける厳しさを自分にも向けるべきでしょう」橋下氏は天才的戦略家!若者目線で勝利
三浦博史氏 総合選挙プランニング会社「アスク」代表取締役。沖縄県知事選や東京都知事選などに関わり、高い勝率を誇る三浦:私は昨年の大阪ダブル選挙の分析を行いましたが、橋下氏圧勝のカギは若者の圧倒的支持によるものでした。既成政党の基礎票をどれだけ取ったかは出口調査結果(政党支持率と両者の投票割合)から推測できますが、これはほぼ拮抗していた。どこで差がついたかというと、無党派層の得票。普段はあまり投票場に行かない20~30代が選挙に行き、橋下さんに票を入れたようなのです。この世代が動いたのは、大阪市役所改革を叫び続けたから。討論会でも平松前市長への直接的な批判は極力せず、「市民は守るけど市役所は守らない」と強調し続けた。若い世代の心に直接響くことを、一つか二つに絞って訴えた。そういう意味で天才的戦略家だと思う。私も選挙プランナーとして、これまで若い世代の投票率を上げようと試みてきましたが、なかなか思いどおりにはいかないもの。しかし橋下氏はそれをやってのけた。橋下市長は当選後、高齢者にも負担を求める「積み立て方式への転換」(世代間格差を是正する年金制度の抜本的改革案)を主張するなど、若者目線の政策を訴えていることは注目。世代間格差を放置したまま消費税増税に突き進む野田首相よりも評価されるだろう。また小泉元首相もオバマ大統領も当選後、若者のために特に汗を流したという記憶はない。「積み立て方式への転換」は本来、霞が関や永田町の人たち、例えば「税と社会保障制度の一体改革」に取り組む国会議員や財務省や厚労省系のシンクタンクなどが提唱していないとおかしい。橋下市長の圧勝後、すり寄る政党・国会議員は多いが、自ら高齢者の票を失ってでも若者優遇政策を訴える政治家は出てこない。中央政界がそろって橋下市長にすり寄る現状を見る限り、今年の日本の政局は橋下市長を中心に動くことは間違いない。
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大阪都抗争(市闘編)/革命家・橋下(後編)
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