イスラム国 許しがたい蛮行だ
朝日新聞 2015年1月21日過激派組織「イスラム国」が、その凶暴な刃を日本人にも向けた。日本人2人を人質とし、72時間以内に2億ドルを支払わなければ殺害すると脅迫するビデオをインターネットで公開した。人命の重みを顧みず、国際社会に恐怖を与えて優位に立とうとするふるまいは、身勝手で、許されるものではない。「イスラム国」はすみやかに2人を解放すべきだ。「イスラム国」は昨年6月、カリフ(預言者ムハンマドの後継者)制国家の樹立を一方的に宣言し、シリアとイラクで勢力を広げた。昨年来、欧米人らを拘束し、一部を殺害し、映像をネット上で公開してきた。被害者はジャーナリスト、援助活動家など、現地情勢を憂慮する民間人だった。今回の事態は、「イスラム国」の脅威が遠い世界の出来事ではなく、日本と直接つながりがあることを如実に示した。ビデオの中で脅迫者は、中東訪問中の安倍首相が2億ドルを「イスラム国」対策として避難民支援にあてると表明したことに矛先を向けた。首相の中東訪問のタイミングを狙った脅しとみられる。しかし、日本からの医療や食料の提供は、住んでいた街や国を追われる人たちが激増するなかで、不可欠の人道的な援助である。「イスラム国」に向けた攻撃ではなく、脅迫者たちの批判は筋違いだ。安倍首相は記者会見で「許し難いテロ行為に強い憤りを覚える」と述べ、中東地域の平和や安定を取り戻すための非軍事の支援を続けていく意思を強調した。毅然として向き合っていくべきだろう。「イスラム国」は暴力的な戦闘行為を続けることを存立基盤としており、その統治システムも判然としない。今までの国際社会のルールも通用しない。そんな相手と対峙することは容易ではないだろう。一方、国際協調なしにテロ行為には対処できない。日本政府は関係各国と連携して情報を集め、2人の救出に向け粘り強く交渉していく必要がある。2人が拘束された経緯ははっきりしないが、どんな事情で現地にいたにせよ、人命の重みを最優先に対応すべきだ。米国などが実施する「イスラム国」の空爆に日本は関与せず、人々の生命と生活を守ることに焦点をあててきた。これまで培ってきた中東地域との協力関係もある。「イスラム国」が暴挙を重ねることのないよう伝えていくしかない。
誰に、どう伝えるんだよ(笑)。
相変わらず支離滅裂でインテリぶるだけの朝日新聞
《毅然として・・・》
と言いつつ、
《2人が拘束された経緯ははっきりしないが、どんな事情で現地にいたにせよ、人命の重みを最優先に対応すべきだ。》
と、記事にはあるが、個人的には、
危ない仕事をしてる人はそれを無理やり やらされてるワケじゃなく、
自分で選んでそれを生業としてるわけで、
こういうことがあるのは覚悟の前だろう。
気の毒だが、その場で即効で殺されず、人質にされて「交渉条件」にされ、命乞いするくらいなら、最初から、そういうところに行くな、
と感じる。
命は大事なのは当たり前だが…
で、朝日とは やはり対照的な、
小気味いいほど、揺るぎなく体制寄りな読売新聞と、
変わらずマッチョな産経新聞 ↓
「イスラム国」 人質の殺害脅迫は許されない
読売新聞2015年01月21日安倍首相の中東歴訪に照準を合わせた、卑劣な脅迫である。断じて許すことはできない。過激派組織「イスラム国」とみられる組織が、邦人2人の殺害を予告する映像をインターネット上で公開した。人質解放の条件として、日本政府に対し、72時間以内に2億ドル(約236億円)の身代金を支払うよう要求している。2人は、湯川遥菜さんと、ジャーナリストの後藤健二さんとみられる。湯川さんは昨年8月、シリア北部で写真を撮ろうとした際、イスラム国に拘束された。後藤さんは、湯川さん救出と取材のため、シリアに入国したとされる。動画投稿サイトに登場したテロリストは、日本に対し、「イスラム国に対する十字軍に参加している。女、子供を殺し、イスラム教徒の家を破壊するために1億ドルを拠出した」と批判した。「イスラム国拡大を防ぐ訓練費用」の1億ドル供与と合わせて、身代金額を算出したとしている。身勝手で筋違いな要求だ。安倍首相はエジプトでイスラム国対策の2億ドルの支援を表明したが、それは避難民向けの食料や医療など人道援助が中心だ。あくまで非軍事活動に徹している。そもそも、民間人殺害などの蛮行を繰り返しているのはイスラム国の方である。イスラム国を空爆した米国や英国などの民間人の身柄を拘束し、空爆中止や身代金の要求が聞き入れられないとして、計5人を殺害している。安倍首相は記者会見で、「人命を盾にとって脅迫することは許し難いテロ行為であり、強い憤りを覚える」と強調し、人質2人の早期解放を求めた。「人命尊重」の観点で対応する方針も示した。政府は、ヨルダンに現地対策本部を設置し、首相に同行中の中山泰秀外務副大臣を派遣した。米欧や中東の各国と連携し、人質の救出に全力を挙げねばならない。過去には、国際的な協力により、交渉を通じて人質が解放された例もある。イスラム国の様々な情報の収集と分析に力を入れたい。不当な要求に応じれば、日本がテロに弱いとみなされる恐れがある。テロ組織を勢いづかせ、同様の事件を引き起こしかねない。菅官房長官が「テロに屈することなく、国際社会とテロとの戦いに貢献する我が国の立場に変わりない」と語ったのは当然だ。テロの連鎖を断ち切るため、テロ資金対策やテロリストの渡航阻止などで、国際社会が一致して取り組むことが欠かせない。邦人人質脅迫 テロに屈してはならない
産経新聞2015.1.21極めて卑劣で残忍な犯行である。日本政府は「テロに屈せず」を大前提に邦人の解放に向けて全力を挙げてほしい。過激派「イスラム国」とみられるグループが、身代金2億ドル(約236億円)を72時間以内に支払わなければ日本人2人を殺害すると警告する映像をインターネット上で公表した。映像では、拘束された2人がナイフを突きつけられていた。身代金は、中東歴訪中の安倍晋三首相がイスラム国対策に拠出を表明した額と同額である。イスラム国は、シリアからイラクにかけて実効支配を広げるイスラム教スンニ派過激組織で、過去にも空爆停止要求が入れられなかったなどとして拘束していた米国人フリージャーナリストらを殺害している。日本人を人質にとっての身代金要求は初めてだ。声明は「日本の首相と国民へ」と題され、「おまえは8500キロも離れていながら、自発的に十字軍に参加した」などとして、米欧の対イスラム国政策への協力を批判している。身勝手な要求を受け入れるわけにはいかない。エルサレム市内で会見した安倍首相は「人命を盾に脅迫することは許し難い行為で、強い憤りを覚える。日本人に危害を加えないよう、直ちに解放するよう強く要求する」「国際社会は断固としてテロに屈せず、対応していく必要がある」と述べ、2億ドルの拠出は避難民への人道支援であることを強調し、実施する考えを示した。菅義偉官房長官も「テロに屈することなく、国際社会とともにテロとの戦いに貢献していく」と述べた。この姿勢を支持する。2004年にイラクのテロ組織が日本人を人質にとった際には、当時の小泉純一郎首相が直ちに「テロには屈しない」との大原則を示した。事件は最悪の結末を招いたが、それでも大原則を曲げるわけにはいかない。無法な要求を受け入れれば、日本が脅迫に屈する国であると周知され、同様の犯罪を招くことにもつながる。日本が歩むべき道は、国際的な反テロリズムの戦いと連携することである。同時に邦人救出に向けたあらゆる努力を尽くすことだ。イスラム国の支配地域などへの渡航禁止を最高度の喫緊課題とし、徹底することも忘れてはならない。
・・・あと、当たり障りのない記事2本 ↓
社説:「イスラム国」人質 早期解放に全力挙げよ
毎日新聞 2015年01月21日
恐るべき事件と言うしかない。安倍晋三首相の中東歴訪(エジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ)中に、イスラム過激派「イスラム国」を名乗る組織が日本人人質2人の身代金2億ドル(約240億円)を要求し、応じなければ72時間以内に2人を殺害すると予告したのだ。首相へのメッセージとして誘拐組織は、日本は「イスラム国」に対する「十字軍」(米欧)の戦いに加わり、「背教者」の訓練を支援して計2億ドルを拠出したため2人の解放には2億ドルかかると説明したが、支離滅裂な論法と言うしかない。そもそも人命を盾に取った卑劣な脅迫には何の大義もない。誘拐組織がネットで公開した映像には、昨年誘拐が伝えられた湯川遥菜(はるな)さんとフリージャーナリストの後藤健二さんらしき人物が映っており、2人ともオレンジ色の囚人服を着せられている。これまで「イスラム国」は欧米の記者や人道活動家などを公開処刑しているが、日本人に対する処刑予告は初めてだ。だが、まったく的外れな要求であることを強調したい。安倍首相は確かに訪問先のカイロで演説し、「イスラム国」対策として近隣のイラクやレバノンなどに2億ドルの支援を表明した。だが、その内容は「イラク、シリアの難民・避難民支援」や「地道な人材開発、インフラ整備」など非軍事的な色彩が強く、「イスラム国」との戦闘に力点を置いた支援ではない。また、日本はイスラエルとパレスチナの和平交渉を側面支援するとともに、大量の核弾頭を持つとされるイスラエルに核拡散防止条約(NPT)への加盟を求め、国際法違反に当たる入植地(住宅団地)建設をやめるよう忠告した。日本はイスラエルにも厳しく注文しながら、パレスチナ人の自立と独立に向けて巨額の支援を行ってきたのである。中東の石油に依存する日本がアラブ・イスラム圏との関係を大事にし、米欧とは異なる平和外交を推進してきたことは広く知られている。日本が「十字軍」に加わったという主張は、言いがかりか日本をよく知らない者たちの一方的な決め付けと言うしかない。だが、2年前、アルジェリアの天然ガス関連施設が襲われ、日本人も10人がテロの犠牲になった。最近の欧州の騒乱を思えば、テロは日本にとって対岸の火事ではないと自戒することも大切だ。イスラエルで記者会見した安倍首相は、人質の処刑予告に「強い憤り」を表明する一方、人命尊重を第一に早期救出を目指す方針を示した。その通りである。日本は中東に有する人脈を生かして人質解放に全力を挙げるべきだ。「イスラム国」の卑劣な脅迫は許されない
日経新聞 2015/1/21シリアやイラクで勢力を伸ばす過激派「イスラム国」とみられるグループが、日本人の男性2人の殺害を警告するビデオ声明を公表した。72時間以内に2億ドルの身代金を支払うよう求めている。安倍晋三首相がエジプトやヨルダンなど、中東4カ国・地域を訪問しているさなかの卑劣な脅迫である。人命を取引材料とする非道な行為は断じて許されない。安倍首相は訪問先のイスラエルで「人命第一での対応を指示した」と述べた。映像に映る男性は昨年、内戦中のシリアで拘束された湯川遥菜さんと、取材でシリアに向かった後、行方のわからなくなったフリージャーナリストの後藤健二さんとみられる。「イスラム国」は暴力による恐怖で支配地域を広げてきた。残虐行為を繰り返し、従来の国家秩序を否定する過激派組織の台頭は国際社会に共通の脅威である。米国が主導する有志連合が「イスラム国」の拠点に空爆を続けている。これに対し、「イスラム国」は拘束した米国や英国の民間人を相次いで殺害し、残忍な映像を公開してきた。今回の日本人の殺害警告は、「イスラム国」の蛮行が遠い地の話ではないことを示した。映像に登場する黒覆面の男は「日本の首相へ」と呼びかけ、身代金を要求する理由として安倍首相が「イスラム国」対策のために2億ドルの拠出を表明したことをあげた。見当違いも甚だしい。「イスラム国」の暴力から逃れるため、シリアやイラクでは多くの人々が住む家を追われた。難民を支える環境を整えることが急務だ。そのための人道支援である。「イスラム国」の支配地域から伝えられる民族や宗教の少数派や女性、子供に対する非人道的な行為こそ断罪されてしかるべきだ。「イスラム国」の活動に加わった欧米出身の若者が母国に戻り、テロ行為に及ぶ危険も増している。フランスの風刺週刊紙襲撃など同国での連続テロ事件をきっかけに、欧米とイスラム世界の亀裂が深まっている。安倍首相は「テロに屈してはならない」と述べるとともに、「国際社会と連携し、地域の平和と安定に貢献する方針は揺るがない」と決意を示した。「イスラム国」と対峙する各国と綿密に連携し、2人の早期解放に全力をあげてほしい。
ちなみに
菅官房長官の
「テロに屈することなく、国際社会とテロとの戦いに貢献する我が国の立場に変わりない」のコメント、社説に載せたのは読売と産経のみ。
東京新聞は、社説ではこの人質事件、一紙だけ採り上げなかった。