反橋下キャンペーンに毒されたマスコミ
転載元: 大西 宏のマーケティング・エッセンス 2011年11月29日マスコミというか評論家も含めてですが、反橋下キャンペーンを情報源としているのか間違った報道が気になります。どうせ地方都市大阪のことで、東京の遠隔地なので、下調べもいい加減になってしまうのでしょう。選挙も終わったことなので、反橋下キャンペーンがいかに、有権者をミスリードするものだったかを書いておきます。誤解のないように断っておきますが、別に維新の会とはなんの関わりもありません。橋下市長は、引っ越す前のマンション、またオフィスの近くにお住まいですが、お目にかかったこともありません。私自身は、大阪市で生まれ、大阪府で育ち、オフィスも開設当初は大阪市、その後は大阪の郊外の江坂に移転し、大阪の衰退を身をもって体験させられてきた一人です。大阪は潜在力はあります。経済規模で見ても、いま債務危機に陥り、ユーロ体制を揺るがす引き金となったギリシャのGDPがおよそ25兆円、大阪府は39兆円でギリシャの一国よりも大きな経済圏です。人口も884万人で、オーストリアやスイス、さらにイスラエルよりも多いのです。そんな国家にも匹敵する経済や人口規模をかかえる大阪が一地方に過ぎず、自由な政策決定ができない、いわば霞ヶ関の植民地となってしまっていることが不自然なのです。アジアの都市間競争でも敗北し、衰退の一途を辿っています。このまま衰退すると、大阪だけの問題ではなく、日本は巨大な大阪をお荷物として抱えてしまうことになります。だから大阪だけの問題ではないことをご理解ください。さて、反橋下キャンペーンは目を覆うような酷さがありました。問題のすり替えを堂々と展開したのです。これほど有権者をバカにした話はありません。平松応援隊の暴走そのものでした。まずは大阪府の財政問題でした。財政再建を掲げながら、大阪府の地方債が大阪市と比較して橋下知事時代に増加したというキャンペーンが展開されました。なぜ増えたかの説明がないのです。増えた原因は、本来は国から支払われる地方交付金が、国の財政難で支払いが困難になり、各地方に地方債を発行させた結果です。臨時財政対策債の問題で、国の財政事情を地方に押し付けているわけで、これは地方としては手の打ちようがないのではないかと思います。アイデアがあったら、それを書くべきです。いずれにしても、原因を示さず、霞が関のプロパガンダよろしく、反橋下キャンペーンの材料にしたのです。第二は、咲洲の庁舎の問題です。ご存知の方も多いと思いますが、その庁舎は、大阪市が大失敗したWTC(ワールド・トレーディング・センター)プロジェクトの建物で、更生手続に入っていたビルでした。このビルが東日本大震災で耐震性で問題があることが発覚したのですが、まさか大阪市が建てたビルが耐震性で問題のあるものだったとは誰が予測できたでしょうか。いくら書面や図面を見てもそんなものが書いてあるわけがありません。
大阪市の計画がずさんで破綻しただけでなく、ビル建設の管理もずさんだったことが発覚したのです。そのプロジェクトに関わった市職員や工事を請け負った側の人たちはいまどうしているのでしょう。クレームをつけるべきは市職員や建設した側に対してであるはずです。また咲洲庁舎への移転に費用がかかるために無駄なことに出費し、また今後もしようとしているという一方的な批判が展開されています。テレビ番組で前後の事情を知らないコメンテーターが、あたかも大出費で問題だと指摘していましたが、それも頓珍漢な話しです。現在の大阪府庁の本館は、1926年(大正15年)に竣工したもので、現行の都道府県庁舎として最も古い建物です。
高校がすぐ近くだったので、よく食堂を利用した懐かしい建物ですが、その後に建てられた別館ももう半世紀になろうとしています。狭く、また老朽化しており、当然耐震性にも問題があるのですが、財政難から、新庁舎建設が先送りされてきたのです。
だから、焦点は、現在の府庁を建て替えるのか、咲洲に移転するかの選択の問題に過ぎません。
咲洲庁舎の耐震性で問題が発生したために、移転計画は修正されるでしょうが、現在の庁舎も建て替えなければならないので、咲洲に移転するから新たに費用が発生するという問題ではなく、これもなにが争点だったのかをはぐらかす話です。第三は、大阪都構想は橋下知事が突然発案したものではありません。すでに太田房江知事時代からの構想でしたが、大阪市の猛抵抗にあって頓挫していたものを、橋下知事が再浮上させたものです。構想に具体性がない、さらに関空をハブ空港化させ、リニアを通すということもゼネコンへの利権誘導だという批判がありましたが、基本的に必要なインフラは経済発展のためには必要です。
具体性がないという批判や反対は、現状を維持したい、新しいことをするなという人の常套句です。どういう修正を行えばより具体的な計画になるのかというポジティブな発想をせず、ダメダメでは話になりません。対案すらないのです。具体性がないのではなく構想力や想像力、建設的な発想が不足しているに過ぎません。問われているのは、こうしたネガティブキャンペーンで展開された間違った情報を鵜呑みにしている一部のマスコミやコメンテーターの立ち位置です。自らの地方への権力をいかにしても手放そうとしない霞が関の代理人なのか、地方主権化について真面目に考える立ち位置なのか、それを明確にしてから報道しないと、またマスコミが日本の変革を潰すという構図になってしまいそうです。
地方主権は政治家ならすべてといっていいほど総論賛成ですが、具体的に真剣に推進しようとはしません。口先だけの地方主権賛成なのです。そして具体的な構想が地方から進もうとすると、具体性がない、できっこないと評論家になってしまいます。
霞が関を敵にしたくないからでしょうか。国のカタチを変える、体制を変えようという流れへの霞が関の抵抗はすさまじいものがきっとあると思います。今回の大阪ダブル選挙は、霞が関と地方主権を望む側の代理戦争だったという見方もできるのではないでしょうか。
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大西宏/大阪ダブル選に見た「日本変革」潰しの構図
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