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新生・金本タイガース/対談 土井正博×上田二朗

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転載元 サンスポ
『鬼筆・植村代表補佐兼特別記者「徹也の部屋」』


注目の人物や話題に鬼筆記者こと、植村徹也サンケイスポーツ代表補佐兼特別記者がズバリと斬り込む「徹也の部屋」。
サンケイスポーツ専属評論家の土井正博(71)、上田二朗(68)両氏を招き、就任したばかりの阪神・金本知憲監督(47)について熱いトークを展開。
再建に取り組む金本阪神を投打の2回に分けて分析した。

◆藤浪を独り歩きさせる

植村
金本阪神が優勝するために何が必要か。
まず投手ですが、わたしは来季、金本監督は藤浪を開幕投手にすると思うのですが。

上田
それでいいと思いますよ。
3年連続2桁勝利をあげて確固たる地位を築きつつある。
独り歩きさせるために『お前がエースなんだ』という意識を植え付けてやったらいい。

植村
具体的な期待の数字は?

上田
最低15勝。負け数はひと桁。
ローテの投手は、勝ち数を増やすよりも負け数を少なくするのが基本ですから。

植村
来季はよりエース級との対戦が増えると思います。
そこで競り勝つためには?

上田
1点でも失点を少なくすることと、完投すること。
今は分担制が確立されているが、1人で投げ切れる投手は投げきらないと。

植村
今季は制球が安定しないために球数が多かったですが。

上田
僕の経験からいえば、先発投手は周囲が思っている以上にスタミナがあるもの。
藤浪だって150球くらいはいけると思いますよ。

植村
金本監督は球数で藤浪を見てはいけないと。

上田
球数よりもボールが浮いてきたとか引っ掛かってきたとか、内容で見てやってほしいですね。

植村
技術的なことはどうですか?

上田
力まずに、スムーズな体重移動ができること。
もともと力んで投げる投手だけど、それをうまくコントロールして、体重移動に狂いなく、きちんと着地できるようにすれば。
それができるような下半身を作っていけば、おのずとリリースポイントが安定してくる。
そうすると打者を追い込みやすくなるし、必然的に球数も少なくできるはずです。

植村
今季は昨年よりステップの幅が狭かったように思います。

上田
今年はちょうどよかったと思います。
広すぎると投げたあとに反動で体が戻って、ボールが浮いてしまう。

植村
土井さん、打者目線で見た今季の藤浪はどうでしたか?

土井
甘い球は来ますよね。
1球目にビシッと来ても、必ず甘い球が来る。
だから相手チームはそこを狙ってくる。
東京ドームみたいに狭い球場では、打たれるのが怖いからボール球から入ってしまう。
それでカウントが苦しくなって、甘くいったところをガツンと打たれるわけです。

植村
ストライク先行で、どんどん向かっていったらいいと。

土井
そうです。
あれだけ力のあるボールで1球目からドーンとストライクがきたら、相手は苦手意識を持ちますよ。
捕手もど真ん中に構えて『そら来い!』みたいな感じでいいんです。
藤浪がいいときは、必ず自分のカウントで投げていますよね。
簡単に打たれる投手じゃないんだから、どんどんストライクを投げればいい。
それくらいの逸材ですよ。

植村
やはり来年は藤浪中心でいい。

土井
そうです。
藤浪で貯金を7、8つ作って、他の投手陣が5割くらいでいけば。
あとは孝行息子的な投手が出てきて2、3と貯金をしてくれるもの。
(全体で)5割ラインでいけば何とかなるのが、今のプロ野球なんですから。

(2)若い投手は経験必要!辛抱して使え!

植村
他の投手はどうですかね。

上田
メッセンジャーは今年みたいなことはないでしょう。
来年、藤浪と双璧のものを出してくれると思う。
今年は藤浪よりエース格との対戦があったし、何より打線の援護がなかった。
来年、打線とかみ合えば、今年の藤浪と成績が逆転してもおかしくない。

植村
岩崎はどうですか?
クライマックスシリーズ(CS)ではリリーフで使いました。

上田
やはり先発でしょう。

植村
安藤、福原は来年、年齢的に厳しいと思うのですが…。

上田
そこは早く手を打っておかないといけなかったのに、やれていない。
それはね、若い子にチャンスをやって、ダメだとすぐファームに戻すからなんです。
3回よくても、1回ダメならファーム。
緊張する場面で何度も投げるから、そりゃ疲れて打たれることもありますよ。
でも、それですぐファームに戻していては育ちません。
経験が必要なのだから、辛抱して使わないと。

植村
福原、安藤の後継者は?

上田
松田でしょう。
この子を使っていかないと、阪神の次代の中継ぎは機能しない。

植村
マウンド上の弱々しげな表情が気になりますが…。

上田
それを変えてやらないといけない。
打たれても、どんどん使ってやらないと。

植村
ボールを置きにいくし…。

上田
それも教えてやらないと。
コーチの仕事。投手でいえば速い球を投げられる、打者でいえば遠くへ球を飛ばせる。
そういう一芸を持っている選手は絶対に伸ばしてやらないといけないんです。
松田には、速い球を投げられるという長所があるんだから。
走者がいて、均衡した展開で投げる。
そこで腕を振れないのは気持ちなんです。
それを磨いてやるには経験しかない。
打たれても打たれても「行け! お前しかいない」と経験を積ませていかないと強くなりませんよ。

土井
それも(本来は)プロに入って1、2年目の勢いがあるときにやらないといけないですよね。
今年も、見ていたら阪神の若い投手はちょっと打たれたら、すぐに下ろされちゃう。

植村
岩貞、横山はどうですか?

上田
横山はまだ怖さも何も知らない。
だから近々に育ててやらないといけない。
岩貞は怖さを知ってマウンドで恐々として投げている雰囲気がある。
そこも使って経験を積ませるしかないんです。
教えることは「表情を変えろ」とかでいい。
「ナニクソって顔をしてみろ」とか。そんなことでいいんです。

植村
阪神の投手は内角を攻めない。

上田
それは捕手のせいですよ。
今の若手は、ほとんど自分で考えて投げていないと思う。
90%以上、捕手のリードだと思います。
強気の攻めで、育ててやらないといけないでしょう。



◆金本監督は我慢が必要

植村
続いて打者ですが、金本監督は鳥谷に
「物足りない。変わらないと」と。
プロ13年目で、変えられるものでしょうか?

土井
本人が「やる」といって1年間、棒に振るくらいの覚悟があればできるでしょう。
それだけのセンスはある。

植村
この写真を見ると、右肘が上がってますよね。
こういうのは直るのですか?

土井
彼は流し打ちがうまい。
得意だからこそ、こうやって肘を開けて中堅から左翼方向へ打つのでしょう。
ただ、この打ち方だとヘッドが走らないし、ボールを面でとらえるのも難しい。
こすってしまうんです。
その証拠に三塁方向へのファウルフライが非常に多いですよね。

植村
確かに。

土井
右脇を締めて打てばボールを面でとらえられてヘッドも走るので、右方向へガツンと強い打球が飛びます。
ただ、これまで中堅から左方向へ安打にできていた打球が、二ゴロなど右方向への凡打になるリスクは、多分にある。

植村
それを受け入れて取り組めるか。

土井
そうです。
一方で、アベレージヒッターとして打率3割を目指せば、シーズン200安打も狙える選手。
そういう長所が生かせる打順に置いてやれば、阪神は強くなりますよ。

植村
和田前監督は、「出塁率が高い」と1番で起用した。
しかし来年35歳。
1番・遊撃では負担が大きすぎませんか?

土井
全試合に出られるということは、それだけスタミナがあるということ。
大丈夫です。
あとは年間を通じて、いい体調を維持できるか。
今年は故障の影響もあってか、あまり状態がよくなかった。
守備でも飛び込んでいける場面で、いけませんでしたよね。

植村
体調さえよければ…。

土井
やれると思います。
あとは他の打順がどうケアするか。
今年はマートンもゴメスも打てなくて、打線が機能しなかった。
クリーンアップの選手が2人、あるいは1人でカバーしてしまうくらい、がんばってくれればいいんですが。

植村
若手が狙えるのはどこでしょう。
今季は三塁、中堅が固定されませんでした。

土井
三塁はホットコーナー。
お客さんに一番見られるポジションで、歴史的にも三宅秀史さん、巨人なら長嶋(茂雄)さんが務めてきた大事なところ。
そこを相手投手の左右でコロコロ変えるのは、よくないですよ。
三塁こそ生え抜きを育てていかないと。
今は西岡ですよ。
故障せず、交代せずにやってくれればという条件つきですが…。
彼や福留に期待するところは、彼らがしっかり働いてくれれば、目をつぶって1軍で若手1人を育てられるという点にあるんです。
西岡と福留がしっかりしていれば、その裏で江越とか、梅野を育てることができますから。

植村
和田前監督は江越や梅野を辛抱して使ったと思いますが、辛抱できないレベルだったのではないでしょうか。

土井
負けるから辛抱できなくなる。
今年は西岡が故障して外国人も不振で、それでもCSには行きたい。
そうなると、もう育てている場合ではなくなる。
辛抱できなくなるんです。

植村
今年の打線は465得点がリーグ最下位、78本塁打は5位。
金本監督の厳しい指導で好転しますかね?

土井
やってもらわないと困るでしょう。

植村
来年、勝つためには、かなり補強をしないといけないと思うのですが。

上田
そう思います。
力のある選手はどんどん年をとっていく。
育成しつつ勝つ、二兎を追うのはタイガースの本来のあり方だけど、若手が本当に育ってくるまでの間にも勝つには補強しないと。
まして来季はマートンがいない、呉昇桓もどうなるかわからない。

土井
ある程度、若手を使っていけば、来年はまだダメだろうが、その次の年は芽が出てくると思います。
そのバックアップをフロントがすると、「一度つぶして立て直してくれ」と言っているのだから、監督はやりやすいですよね。

植村
我慢してポジションを与えられる。

土井
今まではそれができなくて、ツギハギでやっていた。
金本監督が方針を曲げずにやっていけば、来年はともかく、その次の年は。

植村
ただ、負けを代償にしてやる可能性が高い。
球団や電鉄本社が、ファンの批判に耐えられますかね。

土井
それが一番心配です。

植村
僕はタイガースを30年くらい取材していますが、我慢できたためしがない。

上田
その点だけど、金本監督は「勝ちを優先する」と言っている。
若手も育てて勝ちも優先する。
そのためには…。

土井
補強しかない。

上田
そうです。
若手が本当に育ってくるまでの間の、つなぎとしての補強は絶対にしてやらないといけない。

土井
ある程度はドラフトでも。

植村
近年のドラフト1位は、ほとんど活躍していませんね。

上田
岩崎は6位。
下位で獲得したことは評価しなければいけないが、やはり1、2、3位。
働いて当たり前の人間ががんばらないとチームは活性化しない。
みんなじゃなくても、そのうちの1人でいい。

植村
昨年のドラフト会議では1、2位が即戦力投手(横山、石崎)で、ともに0勝。

上田
横山はこれからの投手だから仕方ない。
でも石崎は中継ぎの即戦力として獲得したんです。
いい球を投げるしスタミナもあるのに、もったいない。
そりゃ、新人なんだから打たれますよ。
それを我慢して繰り返し使って、自信をつけていくんだから。

植村
金本監督は辛抱できますかね。

上田
そこは監督よりコーチの問題ではないでしょうか。
「この選手を使ってください」と言えば、監督も使ってくれるだろうから。

植村
そろそろまとめましょうか。
投手は藤浪中心。
打者は1番・鳥谷で、クリーンアップがしっかりすれば、なんとかなる。
あとはフロントと金本監督の我慢と忍耐。
これができれば、来年は難しくとも、2年後には花が咲く。

土井
あとは梅野を育てないといけない。
捕手がしっかりしているチームは踏ん張れる。
捕手をコロコロ変えるのはよくない。

上田
梅野は打撃を評価されて大学日本代表に入った。
捕手としてのリードが評価されたわけではないんです。
それをわかって獲って、捕手をやらせているんだから、時間がかかることはわかっているわけです。
辛抱しないと。

植村
今の使い方では10年後は狩野のような選手になっているかも…。

土井
北川(博敏)も関川(浩一)も野手にしてしまった。
打撃がいいからではなく、捕手として獲ってきたのなら、やはり捕手として育てないといけない。

上田
梅野は肩が強くて送球も速い。
リードとかキャッチングは、これから教えること。
そうじゃないと何のためにコーチがいるんだということになる。
根気よく指導してほしいですね。

植村
結局、我慢と忍耐ですね。

★取材後記

和田豊前監督(53)の退任、金本知憲新監督(47)の就任で阪神を取り巻く空気は激変した。
恒例の大失速で優勝を逃した虚無感から、来季こそは…という期待感への転換。
ファンやマスコミなど取り巻く環境すべてがワクワク感に包まれている。

延べ11人の阪神新監督就任発表を見た私からすれば、いつかどこかで見た空気感で、よくよく戦力を客観的に見たとき、
「火中のクリを拾う、貧乏くじでは…」
と就任を熟考した金本新監督の不安はそのまま残っている。

サンケイスポーツ専属評論家の土井正博氏、上田二朗氏にタイガースの投打の課題、ポイントを指摘していただいた。
確かに練習に取り組む気構えや、技術的な矯正で上積みは期待できるだろう。
それでも優勝を争うには「大補強が急務だ」で一致し、最終的な結論は「ファンやマスコミ、そして阪神本社や球団がどこまで我慢、忍耐できるか」だった。

さあ、新監督にはこの結論をいい意味で覆していただきたい。
(植村徹也)








土井 正博(どい・まさひろ)
1943(昭和18)年12月8日生まれの71歳。大阪府出身。
大鉄(現阪南大)高から62年に近鉄入団。18歳で4番を務めた。
75年に太平洋に移籍し、本塁打王を獲得。
77年に2000安打を達成。
81年に現役引退。
通算2449試合に出場、打率・282、465本塁打、2452安打、1400打点。
指導者としても西武でヘッド、打撃コーチなどを歴任し、清原、中島(現オリックス)、中村らを育てた。右投げ右打ち


上田 二朗(うえだ・じろう)
1947(昭和22)年7月6日生まれの68歳。和歌山県出身。
南部高から東海大を経て、70年にD1位で阪神入団。
アンダースローで1年目からローテ定着。
73年には自己最多の22勝を挙げた。
82年に現役引退。
通算361試合に登板、92勝101敗3セーブ。
引退後も阪神一筋で1、2軍の投手コーチなどを歴任し、フロントの要職も務めた。右投げ右打ち

植村 徹也(うえむら・てつや)
1990(平成2年)年入社。
サンケイスポーツ記者として、阪神担当一筋。
運動部長、局次長、編集局長を経て現在、代表補佐兼特別記者



サルメラ
補強するな、とまでは思わないけど、『暗黒時代』の当時ならともかく、
今の戦力が各々、新監督の元でモチベーションを上げていけば十分、優勝を狙えるはず、と思ってる。
甘く考えてるんじゃなく、それくらい、前二回の監督がひどかった。
監督が変わっただけでそれだけで大幅な補強になってると思う。
それは相手チームとの戦力を比較した場合にも感じること。
もちろん、オ・スンファンの残留は前提にはなるが。

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