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大阪都抗争(黎明編)/維新でしょ

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2013年参議院選挙と日本経済

2013年07月05日


いよいよ参院選が公示された。
昨年末に発足した安倍政権にとっては、半年間の成果を問う「中間テスト」的な位置づけ。
ただしこの中間テストに合格すると、当分、「期末テスト」はやってこない。
それこそ、向こう3年間は選挙がない、という日本政治においては奇跡的な時間となるかもしれません。

その割に選挙戦は盛り上がっておらず、低投票率を懸念する声もある。
争点は不明確だし、政治に対する有権者の期待値も低下している。
そうしたなか、結果として、今回の選挙は「アベノミクスに対する信任投票」の様相を帯びることになりそうだ。

●都議選ショックと参院選の法則

ともあれ、6月23日の東京都議会選挙の結果から話を始める必要があるだろう。
「自民党と公明党が全員当選」という結果は前代未聞であるし、「共産党が第3党に躍進」「第1党だった民主党が第4党に転落」というのも、事前の予想を大きく裏切るものであった。
さらに言うと、維新の会の失速は「案の定」でも、みんなの党の健闘を予想する向きも少なかった。
プロ筋の予想がこれだけ外れる選挙もめずらしい。

4年に1度、行われる東京都議会選挙は、本来は一地方の選挙に過ぎない。
しかし過去には、「国政選挙の先行指標」として注目を集めることが多かった。
そしてまた都議会選挙がある年は、不思議と国政において重要な変化を伴う年なのである。

 
以下に過去の都議選と国政の関係を簡単に表にしてみよう。

○都議会選挙とその後の国政の関係

       (都議選)                    (国政)
1989年:自民▲20議席、社会+18議席  →参院選で自民過半数割れ(7月)

1993年:日本新党が20議席で躍進    →細川政権誕生。55年体制崩壊(8月)

1997年:新進党候補者11人全員が落選   →新進党が解党(12月)

2001年:自民党が議席伸ばす      →参院選で小泉自民党が大勝(7月)

2005年:民主党躍進で都議会第2党に   →郵政解散で自民党が圧勝(9月)

2009年:高投票率で民主党が第1党に   →総選挙で政権交代(9月)

2013年:自民全員当選、民主第4党に  →???(7月)

 
 
2005年だけは、都議選とその後の国政選挙の結果が食い違っているが、それ以外はすべて「都議選の流れが、その後の国政選挙でさらに加速する」パターンになっている。
特に1993年と1997年は、都議会選挙の結果がその後を予見しているようで面白い。

そして12年に1度、6月の都議選と7月の参院選が連続する「巳年パターン」がある。
今年もそれに該当するわけだが、過去の巳年は、1989年は与党が大敗して参院における自民党過半数割れを招いたし、2001年は逆に大勝してその後の「小泉時代」の幕開けとなった。

2013年も同じ法則が通じるのであれば、参院選も与党の勝ちとなるだろう。


●「衆参ねじれ」という不条理

衆院と参院で違う政党が多数を握るという「ねじれ現象」が始まったのは、2007年7月の参院選で自民党が大敗してから。
すなわち、第1次安倍内閣が発端である。

それと同時に、野党は多くの武器を手にした。
「与党が参院で過半数を持たない」ときは、以下の7つの抵抗戦術が可能になるのである。

① 問責決議:法的拘束力はないが、これが決まるとその後の参院での論議はすべて止まる。今回の通常国会でも、最終日の6月26日に問責決議が可決され、電力事業法改正案や生活保護法改正案などが廃案となったばかりである。

② 参院否決:衆院が可決した法案を否決する。衆院で与党が2/3 の議席を持っていれば再可決できるが、その場合も審議日程等が難しくなる。

③ 審議未了廃案:参院で否決してしまうと衆院で再可決されてしまう場合、わざと法案審議をせずに廃案を狙う作戦。

④ 参院先議:国民的な関心の高い法案を作って先に参院で通してしまい、衆院で「丸呑み」させることを目指す作戦。

⑤ 予算関連法案:予算は衆院の議決が優先するが、例えば特例公債法案の可決には参院の同意が必要である。過去にはこれを人質にとって、何度もチキンレースが行われた。

⑥ 国政調査権:国会喚問、参考人招致などを行って揺さぶりをかける。

⑦ 国会同意人事:日銀総裁人事などで、与党提案を野党が何度でも否決する。

この6年間、与野党が攻守所を入れ替えながら、上記のような「七つ道具」を使ったバトルが繰り返されてきた。
今から思えば、何とも不毛な政争であったと思わざるを得ない。
逆に言えば、上記のような武器が使えない状態に戻れるのなら、どれだけ政治が安定するか分からない。

問題は参議院が「良識の府」であるどころか、単なる政争の場になってしまっていることだ。
衆院選が政権選択の場であるとすれば、3年ごとの参院選は政府・与党へのチェックの機会であろう。
ところがチェックの頻度が多過ぎて、「短命総理」が量産されるという弊害が生じている。


●ねじれ解消後のシナリオ

日本政治は、衆院選と参院選が別々のサイクルで訪れるので、ほとんど毎年のように国政選挙をやっていることになる。
結果として、二大政党の党首がしょっちゅう入れ替わり、短命総理が続いてきたのが2007年から12年までの国内政治であった。

ところが今回の参院選が終わると、向こう3年間は国勢選挙がない。
せいぜい2015年春の統一地方選挙があるくらいで、2014年などはまさしく”Golden Slot”と呼んでいいだろう。
首相にとっては、「次の選挙を考えない」でいられる贅沢な期間となるからだ。

これだけの時間があれば、与党は腰を据えて政策運営に当たれるし、国民受けが悪そうな政策にも取り組むことができる。
そして現実に、消費税増税、TPP交渉、原発再稼働、社会保障改革などの重い課題が残されている。
特に2015年までの2年間は、「物価上昇2%」の実現も懸っているだけに、経済問題に全力投球することになるだろう。

あるいは6月14日に閣議決定された成長戦略は、不満の残る内容であったと評されている。農業、医療、労働などの領域における「岩盤規制」などは、この秋の臨時国会であらためて挑戦すればいいし、それでもダメなら来年、再挑戦することができる。

ながらく「1年で終わる首相」が続いてきたものの、2年目以降になって政権運営に慣れてきた首相は相対的に強い立場となる。
規制を守ろうとする官庁側も、安倍政権が長期政権になり、人事や予算を繰り返すにつれて抵抗はしにくくなる。
つまりむこう3年間かけて、改革を加速していけばいいのである。

「ねじれ」に苦しんだ過去6年間を思えば、夢のような政治状況ではないだろうか。

●景気回復は全国まだら模様

さて、改めて選挙の争点が何かと考えると、意外と適当なテーマが見当たらない。
つまるところ、2013年の参院選はアベノミクスに対する信任投票ということになるのではないだろうか。

景気は確かに回復途上にあり、そのことは今週発表された6月日銀短観を見てもはっきり読み取ることができる。
大企業・製造業のDIが7期ぶりにプラスになるなど、企業マインドは好転しており、注目の設備投資は前年比5.5%増であった。

日本企業は少し遅れて、夏頃から動き出す模様である。

今年になってからの月例経済報告の基調判断を見ても、5月以外はすべて上方修正となっている。

○内閣府「月例経済報告」の基調判断

1月:景気は弱い動きとなっているが、一部に下げ止まりの兆しもみられる(↑)

2月:景気は一部に弱さが残るものの、下げ止まっている。(↑)

3月:景気は一部に弱さが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる。(↑)

4月:景気は緩やかに持ち直している。(↑)

5月:景気は緩やかに持ち直している。(→)

6月:景気は着実に持ち直している。(↑)

ただしこれらは所詮、統計もしくは紙の上の世界である。
「国民の景気実感はどうか」といえば、そこは簡単ではない。
個々人によって景気の受け止め方は違うだろうし、景気回復にもさまざまな局面がある。
そして全国レベルで言えば、地域差はけっして小さくはないのである。

たまたま筆者は、先月、京都、広島、仙台、福岡の4都市を訪れる機会があったが、それぞれに景況感もアベノミクスへの評価も違っていた。
以下、現地で見聞したことをごく簡単に報告してみよう。

明らかに良くなっているのは広島市で、地元の証券マンによれば、「広島はもう大丈夫。マツダが復活しましたから」であった。
円高が続いて100円前後で定着していた株価も、今は400円以上になっている。
やはり円安は自動車産業には即効性があり、分かりやすい形でアベノミクスの追い風を受けている。

その正反対の立場にあるのが仙台市である。
仙台周辺は、石油化学、出版、紙パルプ、食品加工(漁業関係)など、円安がマイナスに働く産業が多い。
つまり円安でコストが増えてしまう。
地元の新聞記者は、「アベノミクスによる景気回復は、地方の格差を拡大するのではないか」と懸念していた。

ちなみに被災地の3県は、有効求人倍率(5月)で行くと宮城県1.27、福島県1.23、岩手県1.01とすべて1倍を超えている。
ただし、復興がうまく行っているかというとそれは別物のようで、現地の経営者は「中小企業は採用ができない」「なおかつ若者の就職はうまく行っていない」と怪訝な表情であった。

広島と仙台の中間に位置するのが福岡市であろう。
福岡県は鉄鋼業(新日鉄住金)が悪く、自動車産業(トヨタ自動車)が良い。
前者は中国における鉄鋼過剰生産のあおりを受けていて、後者は米国での自動車販売好調の追い風がある。
いい話と悪い話が拮抗している形である。

ついで札幌在住の友人に、北海道経済について尋ねてみた。
こんな答えが返ってきた。

「農業が主力の北海道経済は、アベノミクスよりもTPPが最大の関心事。ウルグアイラウンド妥結時にはでは6兆円の対策費が出たが、TPP妥結時はどうなるのか。期待値はそれほど高くはない……」

北海道には、円安による外国人観光客の増加という追い風もある。
観光客は価格感応度が高く、最近は台湾や東南アジアからが増えているという。

この4都市だけでも、アベノミクスによる効果はこれだけ違う。
まして県庁所在地でない地方都市ともなると、また違った反応がある。
特によく聞くのは、新幹線や高速道路など交通インフラの整備を求める声である。
アベノミクス「第2の矢」である財政出動は、都会では評判が良くないものの、地方都市を回っていると公共投資を単純に悪玉とは言い切れない現実に出会う。

しみじみアベノミクスとは、お風呂のお湯を温め直すような作業である。
上の方の「期待」はすぐに熱くなるが、下の方の「実体経済」はなかなか温まらない。
熱の伝わり方は一様ではない。
お湯の温度にムラがでることは、ある程度覚悟しておく必要があるだろう。
言い換えれば、格差ができるということになる。
ということは、参院選では意外と地域差のある結果が出るのかもしれない。

今のところデータは与党優勢に出ているが、毎度のことながらその辺は保証の限りではない。
選挙結果が出てから、じっくりと「民意」を読み解く必要がありそうだ。

 


「なんでも反対野党」に力を持たせては、
またぞろ不毛なネジれ政治の繰り返しとなる。
かといって、自民を勝たせ過ぎたとき、
原発再稼働基準も、TPPに向けた規制緩和も、
日本再生の一丁目一番地であるはずの地方分権も、どうなるのかおぼつかない。
今回の選挙の結果が、向こう3年続くとして、
そのどちらもが受け入れにくい。
ネジれず、飲み込まれぬ、そんな政党といえば・・・

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