裁判員の死刑判決、破棄確定へ…最高裁が初判断
読売新聞 2015年02月04日1審の裁判員裁判の死刑判決を破棄して無期懲役に改めた2審の量刑判断の是非が争われた二つの強盗殺人事件の上告審で、最高裁第2小法廷は3日付の決定で、2審の判断を支持し、被告、検察側の双方の上告を棄却した。被告2人の無期懲役が確定する。千葉勝美裁判長は「究極の刑罰である死刑の適用には慎重さと公平性が求められる。裁判員裁判でも、過去の裁判例で示された量刑判断を出発点に評議を行うべきだ」との初判断を示した。死刑の量刑判断を巡っては、最高裁が1983年に被害者数や殺害方法、前科などの9項目の基準(永山基準)を示しているが、裁判員裁判で死刑をどう判断すべきかの判例はなかった。2事件はいずれも殺害された被害者が1人で犯行の計画性もなく、決定は、前科や更生可能性の低さを過度に重視して死刑を選択することを戒めた。今後、裁判員らが死刑判決に慎重になる可能性がある。最高裁:裁判員「死刑」を破棄…2件の無期確定へ
毎日新聞 2015年02月04日裁判員裁判の死刑判決を2審が無期懲役に減刑したことの妥当性が争われた2件の強盗殺人事件の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は3日付で、いずれも死刑を求めた検察側の上告を棄却する決定を出した。2審・東京高裁判決が確定する。小法廷は、2事件はいずれも被害者が1人で計画性も低いと指摘し、「先例の傾向から見ても、2審を覆さなければ著しく正義に反するとはいえない」と述べた。裁判員裁判の死刑判断の破棄が確定するのは初めて。死刑判断に当たり、過去の先例を重視する傾向が強まりそうだ。2件は、千葉県松戸市で2009年、女子大学4年生(当時21歳)を殺害して放火し、強盗殺人や現住建造物等放火罪などに問われた竪山(たてやま)辰美被告(53)と、妻子の殺人罪で20年服役した後の09年に東京・南青山で男性(当時74歳)を殺害したとして強盗殺人罪などに問われた伊能和夫被告(64)。竪山被告について1審・千葉地裁は、出所後3カ月で殺人の他に強盗強姦(ごうかん)も繰り返した点を重視し、「短期間で重大事件を複数起こし、被害者の対応によっては生命に危険が及んだ」と死刑を選択。しかし2審は「殺人以外の事件はいかに危険性を重視しても死刑の選択はあり得ず、生命を奪おうとしていない」と減刑した。伊能被告については1審・東京地裁が「過去に妻子の命を奪い、懲役に服しながら強盗目的で命を奪ったのは冷酷」としたが、2審は「2件の関連は薄く、前科を過度に重視するのは相当ではない」とした。小法廷は「死刑は究極の刑罰で、過去の裁判例の検討が不可欠。死刑の選択がやむを得ないという具体的で説得的な根拠を示す必要がある」と指摘。2件についていずれも「1審判決は、死刑選択はやむを得ないとする根拠を示しておらず、死刑を破棄した2審判決が不当とはいえない」と述べた。裁判官3人全員一致の意見。検察官出身の小貫芳信裁判官は審理を回避し、寺田逸郎長官は慣例で加わらなかった。三浦守・最高検公判部長の話 主張が認められなかったことは残念だが、最高裁の判断なので真摯(しんし)に受け止めたい。◇裁判員裁判◇
殺人や傷害致死、現住建造物等放火などの重大事件を対象に、原則6人の裁判員が3人の裁判官と有罪か無罪か判断し、有罪の場合は量刑を決める。意見がまとまらない場合は多数決となるが、少なくとも裁判官1人が賛成しなければ死刑判決は言い渡せない。裁判員裁判 初の死刑破棄確定へ…「市民参加」何のため
毎日新聞 2月4日死刑という究極の刑罰を前に、市民感覚と公平性のバランスをどう保つのか。死刑と無期懲役で1、2審の判断が分かれた2件の強盗殺人事件の裁判は、最高裁決定により死刑回避で決着した。死刑を選択した裁判員裁判の判決が否定されたことに、遺族は「何のための市民裁判か」と憤り、審理に当たった裁判員経験者は複雑な胸の内を明かした。やはり先例重視 遺族、強い憤り
「泣き叫ぶというよりも、涙が出ないくらい怒りを覚える」。2009年に千葉県松戸市で殺害された千葉大4年、荻野友花里さん(当時21歳)の母、美奈子さん(62)は声を震わせた。友花里さんは、自宅マンションに侵入してきた竪山辰美被告(53)に包丁で胸を刺され、亡くなった。裁判員裁判の千葉地裁は死刑。出所直後から強姦(ごうかん)事件などを繰り返したことが重視されたが、東京高裁で減刑され、最高裁も支持した。荻野さんは「娘は殺されて、裸にされて燃やされた。遺族には『公平』の言葉に意味はない」と怒気を込めて語り、「加害者は一人一人違い、被害者もいろいろなのに、結局、プロの裁判官に都合の良い言葉のまやかしではないか」と訴えた。一方、伊能和夫被告(64)の裁判の補充裁判員だった女性は「先例重視を理由に結論を変えられたことには納得がいかないが、死刑が確定してもショックを受けていたと思う。どこにも落としどころがない」と心情を吐露した。一方で「経験が無駄だったとは思わない。裁判員になったからこそ死刑制度を考えるようになったし、国民が裁判に関わる意義はある」とも語った。裁判員裁判の死刑判決は全国で22件。うち今回の2件を含む計3件が控訴審で無期懲役に減刑された。残り1件は長野市一家3人殺害事件の被告で、2審は共犯者に比べて「関与が限定的」と指摘。検察が上告を見送ったため死刑には覆らない。3件は東京高裁の同じ裁判長が担当した。解説…公平性重視、鮮明に
殺害された被害者が1人の事件で市民が加わった死刑判断の破棄を認めた最高裁決定は「先例の検討は裁判員裁判でも変わらない」と述べ、特に死刑判断の局面では過去の裁判例との公平性を重視すべきだとの姿勢を鮮明にした。司法研修所は2012年の研究報告で、被害者1人で死刑が確定したケースは、仮釈放中の無期懲役囚による例や、身代金目的の計画的事件などに限られており、「裁判員にも先例の理解が求められる」と指摘した。さらに最高裁は14年、裁判員裁判の判決が求刑を大きく超えたケースで「他の裁判との公平性が保たれなければならない」とし、先例と異なる量刑判断には「従来の傾向を前提とすべきでない事情が具体的に示されるべきだ」との判断を示した。今回の決定もこれを踏襲して「死刑とする根拠が見いだしがたい」とした。死刑選択という極めて重い市民の判断が覆される例が相次げば、制度の存在意義が揺らぐ懸念もあるが、裁判官出身の千葉勝美裁判長は「過去の例を共通認識として死刑か否かを判断すれば、健全な市民感覚が生かされる」と補足意見を述べた。先例を酌みつつ市民感覚を生かす努力が、プロの裁判官に一層求められる。裁判員の死刑判決破棄2件、無期確定へ 最高裁が支持
朝日新聞 2015年2月4日裁判員裁判による死刑判決を破棄し、無期懲役とした2件の高裁判決について、最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は、高裁の判断を支持する結論を出した。「市民感覚」を反映するために導入された裁判員制度で導かれた量刑判断を、プロの裁判官だけの高裁が覆すことに議論があったが、最高裁は「死刑は究極の刑罰で、裁判結果は何人にも公平であるべきだ」と指摘。死刑については、先例から逸脱した判決は裁判員裁判の結論でも認められないとした。3日付の決定で、検察と被告双方の上告を退けた。裁判員裁判の死刑判決を覆した高裁判決が確定するのは初めて。2件とも無期懲役判決が確定する。2件は、東京都内のマンションで2009年、男性(当時74)を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われた伊能和夫被告(64)と、千葉県松戸市で同年、女子大生(当時21)を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われた竪山辰美被告(53)の裁判。いずれも東京高裁が一審の死刑判決を破棄した。最高裁はまず、死刑を適用する前提として「過去の裁判例を検討して得られた共通認識を、議論の出発点とすべきだ」と指摘。「これは裁判官のみで構成する裁判でも、裁判員裁判でも変わらない」と強調した。さらに、死刑を選択する際に考慮すべき要素として、動機や計画性、殺害方法、被害者数や前科などの項目を挙げ、「死刑が真にやむを得ないと認められるかどうかについて議論を深める必要がある」とした。そのうえで2件を検討。伊能被告については、一審は妻と子の2人を殺害した前科を重視して死刑判決を導いたが、「前科と起訴事件は関連が薄く、前科を過度に重視した一審判決は量刑が甚だ不当だ」とした。竪山被告については、殺害事件に計画性がないと指摘。さらに、事件の前後に複数の強盗強姦(ごうかん)事件などを起こしていたことを一審が死刑判断の根拠の一つにしたが、「これらの事件は人の命を奪おうとした犯行ではない」とし、死刑選択の理由にならないとした。裁判員裁判での死刑判決は昨年末までに22件。今回の決定の2件のほか、もう1件について、二審が死刑判決を破棄し、最高裁で審理が続いている。最高裁決定の骨子
・死刑の適用は慎重さと公平さが求められる。過去の裁判例をもとに検討した結果を共通認識として議論を始めなければならない。これは裁判官のみの裁判でも、裁判員裁判でも変わらない。・死刑が是認されるためには、死刑を選択した判断の具体的・説得的な根拠を示すことが必要だ。・控訴審は、一審の死刑判断が合理的なものかどうか審査すべきだ。・2事件は、死刑に処すべき具体的な根拠が見いだせず、死刑は認められない。
今後、この判決を受け、死刑判決が少なくなるという声があるが、逆だと思う。
人ひとりに、死を言い渡すプレッシャー、
どうせ、三審制でひっくり返してくれるなら感じずに済む。
ひっくり返らなくけも、それがプロの判断だと思うなら、負い目にならずに済むことだろう。
今回の判例は、
「素人裁判員よ、世間的に見て死刑が妥当と思うならどんどん、死刑を宣告せよ。
間違ってたら、こっちで正す」
感情優先に判決に逆の意味でお墨付きを与えた。
これまで世間一般が抱いてた裁判員としての責任感を麻痺させる、まことに有意義な(笑)、判決だった。
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これ、皮肉ね(念のため)。