関電監査役 天下り脈々
大阪市幹部OB歴代7人(2012年4月10日08時09分 読売新聞)橋下市長「禁止」株主提案へ
大阪市の幹部OB計7人が1952年以降、同市が筆頭株主である関西電力の非常勤監査役に天下りしていたことがわかった。
うち少なくとも5人は、市の外郭団体の役員も経験しており、天下りを繰り返す「渡り」の形で25年間、同じポストを引き継いでいる。橋下徹市長は6月の株主総会で、国や市からの天下り禁止を求める株主提案を行う予定で、市側はOBの監査役就任見直しを検討する。
関電や市によると、関電は監査役1人を、市の助役(現副市長)や収入役、財政局長経験者から選任。在任期間は最長23年で、うち87年以降に就任した5人は、市の外郭団体の社長や理事長などの経験者だった。関電は役員の個別報酬を開示していないが、市OBを含む社外監査役4人の2010年度の報酬総額は3300万円で、1人平均825万円。ある監査役経験者は読売新聞の取材に、報酬が800万円程度だったことを認めている。07年3月に市を退職した吉村元志・元財政局長(64)は、ビルの経営・管理などを行う市開発公社の社長を4年務め、在任中に市幹部から監査役への就任を打診され、昨年6月、関電の監査役に就任した。
勤務は毎月の取締役会など、多くて月4日という。市財政局は「監査役就任に市は関与していない」としているが、ある市幹部は「関電から『しかるべき人がほしい』と市長周辺に依頼があった。市長や副市長が人選した。株主としての経営監視が目的だった」と話している。関電は「能力や経緯などを総合的に考慮して選任している。起用にあたって市に相談することはあるが、特定の団体から決まって受け入れているワケではない」と説明する。現在の関電役員は26人。経済産業省出身者が常務取締役に就任しているほか、株主である金融機関などの出身者も役員に名を連ね、社外監査役には検察OBもいる。大阪市と同様に株主の京都、神戸両市は役員を派遣していない。橋下市長は昨年11月の市長選公約で、職員の「天下りの全面禁止」を掲げた。
6月の関電の株主総会では、「経営の透明性を確保するべきだ」として、国や自治体からの天下りの受け入れ禁止を提案することを10日、正式決定する。市幹部は「最終的には市長の判断だが、天下り禁止を提案する以上、今後はOBの紹介は取りやめざるを得ないだろうとしている。戦前に市内一円の電力供給事業を担っていた大阪市は、1951年の関電発足の際、約37万9000株を取得。
その後、買い増しし、現在は約9%にあたる約8375万株を保有している。五十嵐敬喜・法政大教授:経営監視が目的なら、現役の市職員がを派遣すべきだ、巧妙な『渡り』の一種で、官民癒着ととられても仕方ない。<大阪市>元助役ら幹部7人、関電「天下り」
毎日新聞4月10日(火)2時31分配信大阪市の元幹部7人が、関西電力設立翌年の1952年から、同社の監査役(非常勤)に再就職していたことが分かった。東京電力福島第1原発事故後の昨年6月にも就任していた。複数の元幹部は、市幹部を通じて関電側から打診を受けたと証言。市は関電の筆頭株主で、橋下徹市長は全原発の廃止や天下り禁止などの株主提案をする方針を固めている。こうした中、市OBが関電から継続的にポストを提供されることの是非が問われそうだ。有価証券報告書や関係者の証言によると、7人は市の助役や収入役、財政局長の経験者。市を退職後、市の外郭団体幹部を経るケースもある。再就職は79年に中断したが87年に再開、現在も続いている。現在の任期は4年で、多い月で取締役会などに4回程度出席。関電によると、10年度は市OBを含む社外監査役4人に計3300万円の報酬を支払った。現在の監査役・吉村元志氏(64)は元財政局長で、市開発公社社長を4年間務め、昨年6月に就任。当時の局長級幹部から「次どうですか」と打診があったと証言する。また、03年に監査役に就任した元収入役・今川明氏(77)は「(就任は)市長の判断だった」と話す。一方、市の人事担当者は「初めて知った。市としてあっせんしたことはない」と述べた。市は関電株の約9%を保有する。電力事業には監督権限を持たないが、電線や電柱の関連工事には許可権限があり、市庁舎の電気購入の際には電力事業者が入札に参加する。関西電力広報室は「役員は能力や経験などを総合的に勘案し、当社から就任をお願いしている。特定のところから決まって受け入れるようなことはない」とコメントした。斎藤文男・九州大名誉教授:市幹部の再就職先を退職後2年以上経っても公開すべきだ。大阪市:元幹部、関電監査役に7人再就職
毎日新聞 2012年04月10日
「天下りの認識なし」 市の強硬姿勢困惑監査役のポストは、大阪市OBの「指定席」だったのか―― 。市の歴代幹部が関西電力の設立直後から半世紀以上、監査役に再就職していたことが判明した。当事者らは「天下りの認識はなかった」と釈明するが、橋下徹市長の就任後、市は筆頭株主として関電への影響力強化を図る。緊張をはらむ両者の関係に、どう折り合いをつけるのか。先月12日、市役所で開かれた府市統合本部の「エネルギー戦略会議」。元経済産業省官僚で統合本部の特別顧問、古賀茂明氏が関電幹部らに詰め寄った。「役所からの天下りはどのくらいあるのか」。関電側は「個別には答えられない」と回答を拒否。古賀氏は早速、翌週の会議で他の委員に提案した。「天下りの受け入れをやめたらどうかと(関電の)定款に書いた方がいい」市と関電の関係は、戦前にさかのぼる。もともと市には、路面電車を走らせるため、発電・配電事業を行う電気局があった。戦時中、これらの設備を国策の電力会社に譲渡した見返りとして株式を取得。戦後の1951年、関電に再編された際も筆頭株主の立場が引き継がれた。52年に監査役に就任した田坂茂忠氏は市の元助役で、23年間務めた。03年に監査役に就任した元収入役(77)は「市の代表という意識だった」と明かす。07年から4年間、監査役を務めた元財政局長・春田健一氏(70)は「市の意向で動くことはない」と受け止めが異なる。「行政経験を買われて歴代市OBが就任しているが、天下りという意識はなかった」と主張した。一方、元幹部らは、関電への株主提案など、強硬姿勢を打ち出す市に戸惑いも見せる。現在の監査役(64)は、福島第1原発事故後の昨年6月に就任。「重責を感じ、大飯原発3、4号機も現地視察した。緊急対策は相当やっているが、伝わりにくいのだろうか。市の意向を聞きに行くわけにはいかないし、やりづらい」と複雑な心境を明かした。■視点■ 電力会社と対峙、厳しさ求められ
大阪市OBが関西電力の設立直後から監査役に就任してきた背景には、関電側の筆頭株主への配慮というだけでなく、公共性の高い電力事業に一定の発言力を保持したい市の思惑もうかがえる。しかし、原発の安全神話が崩壊した今、市民からは電力会社と厳しく対峙する姿勢も求められ、「天下り」が許容されるかは疑問だ。市財政局によると、51年の関電設立以来、市は年間約50億円(10年度)の配当を受け取るだけの「物言わぬ」筆頭株主だった。しかし昨年3月、東京電力福島第1原発事故が発生。12月には脱原発依存や株主提案権の行使を掲げる橋下徹市長が就任した。事実上の政策決定機関といえる府市統合本部のエネルギー戦略会議では、情報開示や原発再稼働の同意権を関電に求めるなど、関係は一変した。監査役ポストを有効に使い、経営への監視を強める手段も今後あり得る。その場合でも、専門家を推薦するなど抜本的に再検討すべきだ。
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大飯原発再稼働CD/関電天下り、大阪市幹部OB7人
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