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橋下市長候補のつぶやき/体制維新(4)

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転載元: 大阪都 ――体制維新(橋下徹×堺屋太一)
 

改革と権力闘争

タブーだった伊丹空港廃港
直轄事業負担金の廃止問題、庁舎移転、堺市長選挙に続いて、知事2年目の秋には、伊丹空港の廃港を課題に揚げました。
これも大阪、関西ではタブー中のタブー。
廃港の〝ハ〟の字も口にできないというのが、知事就任当時の状況でした。
関西経済はもちろん、周辺の北摂地区にも自治体や、地元選出の国会議員から猛反発を受けるのが必至だったからです。
役所としても触れないでおきたい問題でした。
特に大阪府庁は関西経済界の意向を最優先で考えてきたことから、経済界から反対される提案など一切できませんでした。
様々な事業で財界に協力してもらっている事情もあったでしょうし、
歴代知事が経済界の支援を受けてきたしがらみもあったでしょう。
しかし、関西国際空港を、韓国の仁川空港等に負けないアジアの国際空港として活性化させるには、伊丹を廃港にするしかないと思いました。
大阪に伊丹、関空、そして兵庫の神戸空港と、関西の近いところに3つも空港があるのは非効率過ぎる。
僕はこの時も、あるべき国際空港の姿とはどのようなものなのか、と原則論を説き続けました。
今日、明日の利益で考えれば、伊丹空港は残した方がいいかもしれない。
しかし、長期的に見た場合、伊丹が残っていることが、大阪全体、関西全体にとって望ましいことなのか。
 
伊丹空港の利用客の大半は伊丹-羽田便です。
将来、リニア中央新幹線が開通し、東京-大阪間が67分で結ばれるようになったら、伊丹の利用客は激減します。
ならば、関西国際空港をアジアのゲートウェー、国際拠点空港として重点投資し,今から便を良くしていくほうがいいのではないか。
伊丹は国内便、関空は国際便という棲み分けは利用者にとって不便極まりない。
国際線が結合するハブ空港にする必要があります。
このような話は、中長期的に伊丹を廃港にするという目標を掲げて動き始めます。
そして、そのような目標が設定されれば、伊丹廃港後の広大な跡地についても、その利用計画を議論することができます。
伊丹空港周辺でシンポジウムを何度も開きました。
伊丹空港存続を求める住民に僕の考えを説き、住民の話にも耳を傾け、意見を戦わせました。
そして、子どもたちの世代、孫たちの世代のために、夢のある大阪にしましょう、と訴え続けているうち、廃港でもいい、いや、廃港の方がいい、という声が大きくなってきました。
伊丹の隣の池田市でのシンポジウムでは、最初に「伊丹廃港でもいい方は?」と訊くと、1500人くらいの出席者のうち手を挙げたのはたった数名。
ところが、シンポジウム終了時には、3割くらいの方が賛成に回ってくれました。
空港は本来どうあるべきなのか、と説けば、住民の方々にも理解していただけるかもと確信に至りました。
その上で、府議会に伊丹空港決議を働きかけて、過半数で伊丹を中長期的に廃港にするという大阪府議会初の決議が出されました。
 
関空への経営支援金を止めた思い
そして、何と言っても国とのやり取りです。
自民党政権では関空問題は何も動きませんでした。
しかし、前原国交大臣(当時)が誕生して、状況が大きく変わったのです。
前原氏は大臣として国全体を見られていました。
そして明確に羽田を強化するビジョンを持っておられました。
まずは羽田空港の拡充でが先で、関空はその後という認識だったと思います。
これはまずいと思い、とにかく伊丹空港、廃港と騒ぎ続けた。
そうすることによって、存続論者は、橋下は何を考えてるんだ!と反論してくる。
その筆頭が兵庫県の井戸知事です。
とにかく騒がないと、東京は関西なんて意識していません。
そんな中でワンチャンスが訪れた。
関空は、国から経営支援金を数十億円受けていました。
この支援金をもっと増やせ!というのが関西自治体、そして関西経済界の主張でした。
国交省も財務省にカネを出すように要求する立場です。
もちろん、大阪府も、関空への経営支援金を要望する立場です。
ところが、この伊丹廃港論議が関西で沸き起こっている事を見て、当時の民主党事業仕分けが、経営支援金を止めるかもしれない、という情報が伝わった。
関西は大慌てです。
関西の総力を挙げて、支援金は絶対に出してくれるよう要望する動きになりましたが、僕は支援金を止めてもらおうと判断しました。
この方が、関空について関係者が必死になり、これまでとは違う動きをするでしょうから。
僕の意図をしかるべき人たちに伝えながら、案の定、事業仕分けは経営支援金を止めると判断してくれました。
そして狙い通り、「関空の抜本的解決策が出るまでは」支援金が止まることになったのです。
これで関係者は必至のパッチで関空の抜本的解決策を考えます。
ここで前原大臣が強力なリーダーシップを発揮して下さった。
自民党政権では考えられなかったことですが、、前原大臣は、伊丹空港と関空を経営統合して、運営権を民間に売却するという案を決定してくださった。
2012年4月に新会社ができる予定です。
これがうまくいくかどうかは分かりませんが、これまでと同じ状態で何かが解決することは絶対にありません。
一歩動かすことが重要なのです。
僕は、国や自治体が空港経営に口を挟んできた結果、関西3空港はおかしくなったと思ってます。
経営は合理的経営判断に委ねればいい。
どのような空港経営が最適なのか。
伊丹を残すことが儲けにつながるのか、廃港にすれば儲けにつながるのか、
これは民間の判断です。
僕は伊丹を廃港にして、関空に経営資源を集中投下すべきと考えていますが、それも新会社を引き受けた民間経営陣の判断によりますね。
そして、国交省とすったもんだやって、大阪市中心部と関空を結ぶ高速アクセス鉄道の調査も動き始めたのです。
 
地域政党「大阪維新の会」
2年目の秋に堺市長選挙が終わり、府議会の勢力図も変わってきた。
WTCビルの購入は決まりましたが、府市の水道事業統合協議はなかなか進まない。
平松市長大阪府が悪い、橋下が責任を果たさなかったというが、結局、府市組織が別々であるということが根源的な問題です。
何度となく協議が破談になりそうになった時に、僕は府庁の反対論を抑えて、平松市長案に妥協していった。
最後には、大阪市水道局が大阪府水道事業を担うという案にまで妥協しようとした。
ところが、府内市町村が猛反発。
府内市町村は大阪市と対等の立場で一つの水道企業団にしたいという意向でした。
その方が筋が通っている。
平松市長は大阪市水道局を中心に考えていたが、本来は大阪市も含めた府内全市町村で、一つの新しい水道事業体をつくるべきなのです。
2年協議を続けましたが、結局、水道一つも統合できない。
協議だけでは、大阪全体の二重行政、二元行政が解消するはずがないと強く思いました。
そして、いよいよ大阪問題の最終章に進む段階にきたと判断しました。
大阪府と大阪市の長年の抗争に終止符をうつ「大阪都構想」です。
平松大阪市長となぜ対立するのか
平松市長と僕の違いは何なのか。
僕は仕組みを変えるのが政治家の一番大事な仕事と考えています。
それに対し、平松さんは行政の長として、今の仕組みを前提として組織を安定的に動かすことを重視しているのだと思います。
体制を変えるなどは考えてもいないのでしょう。
そして、選挙での勝敗は、体制変革のエネルギーです。
体制を変えようととすれば権力をめぐる戦いになる。
選挙で自分の政治的ポジションを確立しないと体制の変革はできません。
選挙に勝つことが目的になっては本末転倒ですが、様々な問題提起をしたうえで、それで民意を得られるかどうかを諮る。
選挙は重要な政治的手続きです。
さらに、平松さんとの考え方の差は、大阪府知事という広域行政の長と、市町村という基礎自治体の長との立場の違いに根差しているのでしょう。
基礎自治体の長たる市長は、区民祭など地域の行事に頻繁に出て、住民の皆さんの顔を直接見てコミュニケーションを図るのも重要な仕事です。
対して、広域行政の長たる知事は、住民と直接接触するよりも、景気対策や雇用対策、空港、港湾、高速道路、鉄道などの広域インフラ整備、自治体外交、国との権限折衝など、地域全体をどう改善するか考えるのが仕事です。
基礎自治体の長とは仕事の内容が全く違います。
このことは「大阪都構想」の要になる点で、大阪全体の大都市の経営者である広域自治体の長と、住民の皆さんとコミュニケーションをとりながら生活を支える基礎自治体の長、この二つの仕事は全然違うものです。
市の成長戦略はスカスカ
ところが、260万人の人口を抱える大阪市では、市長が両方を兼ねているところに大きな問題点がある。
260万人は基礎自治体として大き過ぎます。
きめ細かい行政サービスを提供することは難しい。
大阪市民にとって悲劇です。
そして大阪市長が基礎自治体の長と同時に、広域行政体の長の仕事をすることなど絶対にできない。
完全に管理スパンを超えてしまう。
 
平松市長からは放置自転車対策、市民協議の話はよく聞きますが、大都市の経営者としての広域行政のビジョンは何も聞いたことがありません。
広域行政の長が何をやっているのか、ご存じないのだと思います。
大阪府が大阪の成長戦略をまとめにかかった時に、大阪市も慌てて成長戦略をつくり始めた。
平松市長の指示ではなく市役所が気を利かしてつくったのでしょうが、突貫工事なので中身がスカスカ。
これも大阪の二元行政の悪弊で、大阪には大阪府のつくった成長戦略と、大阪市の成長戦略が同時に存在し、分野やエリアが被っている。
大阪全体の方針がバラバラであるという大阪問題の象徴です。
そして平松市長のビジョンに基づいているワケではないですから、平松市長も成長戦略を自身の言葉で語ることができないはずです。
本来、大阪市長は広域行政の権限と責任を持っているのですが、平松市長は地域行事回りに力を注いできた。
だから、橋下は選挙ばかりやって、知事の仕事は何もしていないと感じるのでしょう。
大阪全体の仕事をする長と、住民の顔を見ながら仕事をする基礎自治体の長の役割分担をしましょう、というのが「大阪都構想」です。
 
「大阪都構想」を僕が宣言してから、それまで比較的良好だった平松市長との関係は悪化しました。
市長は「橋下知事は大阪市を潰そうとしている」「大阪市民を潰そうとしている」と批判します。
僕は「大阪市役所と大阪府庁を潰して、新しい役所をつくる」と言っているのに…
統治機構の仕組みを変えよう、と提起しているのです。
これこそが政治家にしかできない政治の役割だからです。
そして大阪は今、統治機構を変えることが絶対に必要なのです。
 
to be continues.
 
大袈裟に言えば、橋下は100年に一度の改革者である。
もし、これが当選しなければ、大阪の復活する可能性をしばらく失うだろう。
大阪都構想が成ったからうまくいくとは限らない。
しかし、このままだと確実にジリ貧になる。
これは100パーセント間違いない。
だから、トリックスターだとか、独裁者だとか言われても、ワタシは期待したい。
他の選択肢には、座して死を待つイメージしか浮かばないから。

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