「年金は本当にもらえるのか?」
7月24日政治不信と言われて久しいですね。
政権与党につくと野党時代と主張が真逆になることもありますから、政治家の言葉が信用されないのも無理はありません。
その中でも特に「ポジション・トーク」が著しいのが、年金問題です。
厚労省大臣ポストにつくと発言がぶれたり、経済誌・有識者の間でも意見が真っ二つに分かれていたりします。今回は細野真宏氏の「未納が増えると年金が破綻すると誰が言った?」と
鈴木亘氏の「年金は本当にもらえるのか?」を読み比べる形で考えます。厚労省管轄の社会保障国民会議委員の細野氏と、維新の会ブレーンの鈴木氏の結論は真逆になります。なぜ厚労省関係者からは年金安心論が結論付けられるのか。
これはディベートの戦術に似ています。結論ありきで論理を構築していくやり方です。例えば、タイトルに掲げている「年金未納が増えると年金制度が破綻する」というお題。
タイトルになるくらいですから、これはひっかけ問題で完全に誤解である、という説明が長々と語られます。これは年金制度が破綻すると思った若い世代が国民年金制度を信用せずに未納者となっている、という問題ですが、お題をよく見ると因果関係が逆になっています。
年金未納者は将来自分が受け取れないだけなので、母体数が減るものの加入者の年金支払には影響がでない、と明確な解答が示されますが、これは考えてみれば当たり前の話なので、なるほど!と納得してしまいますよね。一方、細野氏の解説を見ると、当然ながら「SoWhat(だから何?)」と指摘が入ります。
国民年金未納者は強制徴収の厚生年金・共済年金を入れると、全体の5%に過ぎない、というのももちろん正しい計算ですが、強制徴収の両年金にはそもそも関係ない問題なので意味のない主張です。
何より、老後、国民年金をもらえない人達がどうなるかが問題です。生活保護受給者になってしまった場合は全額税負担になります。厚労省管轄の年金財政には関係なくても、国全体の財政には大きな影響がでるのです。このような、「論理のすり替え」によって、問題ない部分が強調されれば年金は安心!安全!という印象になってしまいます。また、「数字の印象操作」も重要なポイントです。
細野氏の解説は、全て厚労省の出している試算に基づいています。
その数字をもとに丁寧にわかりやすくシミュレーションして、実は大丈夫!と解説されますが、そもそもの数字が作為的なものの場合、議論の前提がひっくりかえることになります。
年金運用利回りが4.1%で計算されている点は長期の視点で論じるにせよ問題のある部分です。
また厚生年金などは労使折半なので、加入した方が得!という印象ですが、こちらも会社側は保険料負担も含めて人件費を計算するので、労働力に対しての手取り収入ベースで考えれば同じことになります。
この時点で将来の給付が2倍計算になっているので、数字の印象操作が行われてしまっています。
厚労省試算はむしろ100年安心プランという結論ありきで数字が当てこまれているのがわかります。
現実には少子高齢化の中、現役世代が年金世代を支える賦課方式は限界を迎えます。テレビでの討論や雑誌の特集でも、どのポジションに立って、どこの数字を引用して語っているかに着目すれば本質が見えてくると思います。
特に論理のすり替えは要注意です。天下りや予算の無駄遣いももちろん大問題ですが、年金財政本体の議論とはまた違う話です。その意味で野党側の論者がすべて正しいとも限りません。
細野氏の解説は、厚労省の主張を理解する上では大変分かりやすいものです。(未納増加で年金破綻!という間違った社説も実在します)維新の会の価値観は、従来の年金制度はグレートリセットして精算・一元化というスタンスです。
賦課方式の年金支払い分は事業精算財団方式で処理し、積立方式に長期的に移行していきます。
大きな政策転換ですが、まず年金の現状を正しく理解することがはじめの一歩になります。維新塾生に限らず、年金問題は国民全体で考えなければいけない問題です。
少しでも多くの方に、中立の立場から考えていただければと思います。
「年金問題を解決するグレートリセットとは何か?」
昨日のコラムにて、年金問題に対する見解はとコメント欄でご質問を賜りました。本日は、維新の会の年金問題解決策をご説明します。まず、現状認識として今の年金制度は「賦課方式」と呼ばれるものです。
世代間の助け合い、と称されますが勤労世代が年金世代に仕送りをする仕組みです。
元々は積み立て制度だったのですが、政治家の選挙対策の大盤振る舞いで変わってしまいました。
私たちが払っている保険料は貯金されているのではなく、現受給者の支払いに即使われているのです。
まさに自転車操業ですが、少子高齢化が進むとやがて限界を迎え破綻してしまいます。
(積立時代の財産がありますので、今すぐ破綻するわけではなく、昨日のポジショントークの争点になります。)現役世代の負荷が大変なものになり、誰も加入を望まなくなる、という意味での制度破綻ですが、世代間の不公平をなくそう、との論調で消費税の大増税が進んでいます。
しかし、一番に改革しなければいけないのは年金制度の自転車操業、「賦課方式制度」です。維新の会は年金を「積立制度」に抜本的に変更します。
民主党との違いは、スピード感です。同じ財源で新加入者から徐々に溶け込ませるのでなく、財源を完全にリセットします。
少子高齢化は急激な速度で進んでおり、これこそ「待ったなし」の状況です。やり方は国鉄をJRに再生させた時と同じような手法。
今までの負債を精算する団体をつくって切り離し、新事業として再スタートさせましたね。新年金保険制度は積み立て方式に完全移行しますが、
現年金世代の給付や、現役世代の支払い済み保険料は精算団体で把握・給付をしていきます。
これは旧政権のツケともいうべきもので、莫大な負担ですが長い時間をかけて償却していくしかありません。
経済に悪影響の出ない程度に薄く広い税をかけ、超長期で返済をしていくか、
あるいは高齢者世代の負担を同世代で賄う、という視点から相続税強化などの「死亡時清算」になります。
現役世代にツケをまわさず、亡くなった方がご長命の方を助ける、という趣旨です。国民の財産を国が取り上げる共産主義ではありません。
先送りされればされるほど、この負担が増えてしまいますので、正に待ったなしの改革となるわけです。
さて、グレートリセット後の年金制度はどうなるか?
少子高齢化に対応した積立方式になりますので、「世代間の不公平」はなくなります。
年金未納者の大半であろう制度不信は解消されますね。
一方、本当に年金保険料が支払えない低所得者層に対してのセーフティネットはどうあるべきか?
これはベーシックインカムの理念なのですが、富の再分配が必要です。
高所得者の加入もれがないように、歳入庁を設立し、保険料を税方式で確実に徴収します。
その上で高所得者への給付制限をし、低所得者の減免などにまわしていく方向性です。
セーフティネットを所得の再分配で構築するが、年金は誰しもやってくる問題なのであらかじめ個人積立で財源を別に用意する、という事ですね。
またベーシックインカムの理念のもと、年金よりも生活保護の受給額の方が多いといった現在の矛盾点もあわせて解決していきます。橋下代表のキャラクターからか、維新は徹底した個人主義と誤解されますが、ベーシックインカムの理念はむしろ福祉国家としてのビジョンであります。国がセーフティネットをきちんと構築した上で、「自立した個人」として国民一人一人の自助努力が必要です。
また将来世代にツケを回さず、本当に100年安心できる年金制度改革が必要です。
そのためのグレートリセットなのです。招かれざる大臣
7月27日タイトルは民主党のミスター年金、長妻昭氏の書籍です。年金問題を追及してきた長妻氏の、厚労省大臣の苦労話がまとめられたものです。特に、参考になったのは、改革派大臣に対しての官僚の反発について。
確かに、メディアでは官僚を使いこなせず交代させられた、といった報道でしたね。大阪改革でもどうしても役所とのあつれきが生まれてしまいます。「大阪市の現業職給与、6年間で最大25%削減へ」(読売)
今日も公務員改革のニュースがありましたね。
選挙を通じ市民から直接選ばれ、四年間の任期が保障されているからこそ、
民意の代弁者として大ナタをふるえます。大臣の場合、1~2年で入れ替わりになることが多いので、官僚のサボタージュに遭いやすくなります。
維新の会も官僚改革に切り込みますので、国民の強い後押しが必要ですね。NHKスペシャル 生活保護三兆円の衝撃
7月28日NHKスペシャルは良質なコンテンツが多いですが、こちらはDVD等ではなく書籍として発刊されています。現地現場を知る意味で、本書のような長期取材に基づくドキュメントは参考になりますね。生活保護をもらい続ける中で、徐々に就職への意欲が失われ、社会復帰できなくなっていくさまが描かれています。
また、大阪では貧困ビジネスがはびこり、暴力団の不正に巻き込まれてしまう実態も詳しく書かれています。先日、TVタックル特番でも生活保護は特集されていました。
イギリスは福祉が手厚い国ですが、生活保護は病気・障がいなど本当に働けない方向けとそうでない方とで給付金額が分かれています。
日本も、高齢者・傷がい者のサポートと働ける世代のサポートは区分けしていく必要があるでしょう。
ケースワーカー不足もありますが、受給者のチェックも十分でないので一定期間での再審査もしていかねばいけません。
また、イギリスでは生活保護と失業対策を一体的に行っています。
日本はハローワークが国の管轄で連携がとれていないので、このあたりも改善の余地があります。貧困ビジネスの実態を見ると、現物支給中心の給付もうなづけます。
実施には多少の弊害も出るでしょうが、生活保護者が囲い込みを受けて抜け出せなくなる現状を変えていかねばいけません。本書で紹介されている鈴木亘教授の改善策で維新八策に取り入れられているものもありますね。・勤労収入の上積み制度 (本書では、勤労収入を預かり保護を卒業した時点でまとめて渡す仕組み)・一定期間で再審査する有期制 (八策改定案で正式に盛り込まれました)・生活保護受給者に限り最低賃金を引き下げ雇用を促すこちらは八策には採用されていませんが、アイデアとしては有用だと思いました。今後、維新八策についての議論もあるでしょうから、問題意識をしっかりもって参加したいと思います。
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「維新伝心」で読む5
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