『新・報道2001』1月27日
(VTR)ナレーション:愛知県立刈谷工業高校の2年生だった山田恭平君(享年16歳)、小学校の時から野球が大好きだった彼は、高校でも野球部に所属。そこでは顧問による体罰が行われていた。学校側は自殺と部活動内の体罰の因果関係は明確でないと主張。我が子を失った母親の話から、息子の自殺と、大阪の自殺には、共通の問題が浮かび上がった。山田由美子(母親):子供は殴られて鍛えられるんですよ、と。そうでなかったらどうやって死ぬ気で戦えるんですか、って、直接、ウチに弔問にこられた親御さんに言われたましたし…みんな耐えてる、それに耐えられなかった恭平君が、問題があったんじゃないですか、ということを直接言われました。親御さんがどうぞと言って子どもを差し出している状況で、監督もエスカレートしていってることはあると思うんですよ。ナレーション:桜宮高校で行われた保護者会でも、体罰した先生を擁護する声が上がっている。さらに在校生も、「先生方だけでなく、生徒の私たちも認めていることなんです。クラブ活動を通して、人として一番大事なものを教えていただいているので…」サルメラ:今、過去に遡って、全国各地で体罰問題が次々と発覚。橋下により、また一つ、パンドラの箱が開けられたかっこうだ。
―― 橋下市長は、男子生徒が自殺した件、入試の中止を強く要請しました。教育委員会もそれを受け入れたカタチなんですが。義家弘介(文科大臣政務官・自民党):入試中止の決定のあと、長谷川委員長はこういう発表をしてるんですが、全高アンケートの結果、その中身は、普通科と体育科、体罰事案は数字的には変わらなかった。アンケートの結果を元に発言してるワケです。表面的に中止するんじゃなくて、中がどうなってるのかをもっと調べないと、なにも問題の解決にはならないと思います。教育委員長が少なくとも、こういうコメントを出してるんですから。(サルメラ:義家が言ってるそれは、役人がやらない理由を見つける名人というに過ぎない)宋文洲(経済評論家):企業はひどい事件を起こした時には、ちゃんと業務停止しますから、学校を普通の組織にするには、問題を起こした時には、その罰としても、入試を中止してもいいと思いますね。藤原和博(前杉並区立田中中学校校長):日本では「空気が神サマ」というところがある。ですから、体罰を容認する風潮が蔓延してるとしたら、これは一旦切る、ということは当然だと思います。ただですね、入口で切っても何とでも言えちゃうと思うんですね。絶対人事をやらないとダメだと思います。人事をやらないと魂が入らないので、校長はもちろん、先生たちをどうするのか、ということ。入試の中止決定で、一旦止めたのは、僕は正しいと思います。それでとにかく、考える時間を取ろうじゃないかと、いうことですから。高濱正伸(「花まる学習会」代表):本丸は人事、というのはわかるんですが、まあ、橋下さん、ずっと(僕の考えに)近いな、と思って見てたんですが、入試中止だけで言うと、現場でたくさん子どもたちが見てる皮膚感覚からすると、僕は反対です。子たち達からするとたまんない。で、結局は事なかれじゃないですか。普通科と言って、その中に体育科的なものを残して、双方、傷つかないカタチで終わらせてるワケで、ちょっと違うんじゃないかな、と思いました。川井俊一(元バレー日本代表):僕は、ま、ここの生徒のことで言うと、推薦で決まってる人とか、あるいはここの高校のスポーツ科でやりたいっていう、ここの部でやりたいっていう子いっぱいいたと思うんで、そういう子達っていうのはものすごく色々考えて、最終的の「ここだ」と、「この先生に習おう」と、決めて…目標を立ててきてるワケで、そういう子達にはちょっと酷だったと思うんだけど、だけどね、そういう生徒がそこに入ることが、もっと辛いことになるんじゃないか、酷いことになるんじゃないかっていうのが、橋下さんが言ってることですよね。僕らの知らない情報を、もしかしたら橋下さんは知ってて、僕らがそれを知らないだけでね、それでそういう決定を下したんなら、それはいいのかもしれない。宋:だって子ども達は40発もビンタされること知らないで入学を希望してたんだから。義家:注意してほしいのは、決定したのは橋下市長じゃなく、教育委員会ですから。川井:でも、対外的には橋下さんが動かしたって、みんな思ってますよ。野村修也(中央大学大学院教授):入試中止に関しては、意見の分かれるところですけども、実質はあまり変わってないってこともあるんですよね、この決定に関しては。おそらく橋下市長がしたかったことっていうのは、入試が中止になるほど深刻な事態が起こってるんだ、ということを世の中の人に分かってほしかったし、学校の人たちにもわかってほしかった、ということなんだと思うんですよ。ですから、実際にあまり影響の出ないように考慮しながら、とは言いながらも、入学試験はやめるんだと、明確にしたところに意味があるんじゃないかと思います。平井文夫(フジテレビ報道局解説副委員長):教育現場っていうのは聖域だと思うんです。でもそれは子供にとって聖域ならいいんですが、もしかしたら、教師とか、そういう人たちの聖域になっていたとしたら、とんでもない話ですよね。今、安倍総理や橋下市長が教育改革をしてる。それに対して現場が、「ここは聖域だから、教育の現場に踏み込むな」と反対してますよね。それって、なんとなく聞いてるとね、東電とか日銀とか、農協とか医師会とか…みんな聖域と言いたがる人たちは色んな理由を付けたがるんですけど、それってホントに子ども達や消費者はのことを考えて言ってるのか、実は自分たちの都合だけで言ってるんじゃないのか、そういう疑いをみんな持つわけです。教育現場にもそれがあるので、ここはズバッとメスを入れたほうが、多少混乱しても、そっちのほうがいいんじゃないのか、って思うんですけどね。藤原:教師の人事権は校長は持ってない。首長も持ってないし、教育委員会の委員長も持ってない。複数いる非常勤の教育委員のトップ、教育長…教育委員長じゃないですよ、教育長が人事権を持ってるワケで、これだけ見ても非常にわかりにくいですよね。ですから、こういう内向きの誰が責任取るのかわからないようなシステムを打破するためにも、外部の風を入れるというのは大事なことだと思います。ただね、現場で起こってることについては、校長は、やろうと思えばいくらでもできたはずなんです。現場については校長に権限ありますんで。ですから外から血を入れるなら、まず早急に校長を替えないといけない、ということだと思いますね。校長が変われば学校が変わるということを、僕自身、証明したつもりですから。いま、小中学校、高校も合わせれば、3万数千人の校長がいますけども、民間から入った校長ってほんの百数十人なんです。これ異常だと思うんですね。せめて一割は、民間から校長を入れるべきだと思います。それくらいはいないと、自治体に一人くらいじゃ、おそらく、イジメられて…(笑)。高濱:体罰が何故なくならないかっていうのは、非常に簡単で、巨人の阿部捕手が沢村の頭を叩いたでしょ。あの時に、どの新聞も美談として書いてるんですよ。「よくやった」「ファインプレーだ」と。あれこそが、今の日本の人情…あれくらいはしょうがないんじゃないか、と言ってる根拠ですよ、そういう感覚なんです。たしかに、僕もあれくらいだったらいいと思う。それで監督もコーチもずっと続いてるんであって、今回の30発っていうのは明らかに聖域化の問題なんです、チェックが働かないっていう…何も言えない、だって大阪で一番の指導をやってる人なんだから、っていうね。そういう問題はあると思うんですが、同じではないと…宋:日本の教育の一番の問題は部活なんです。一種のカルト宗教的な活動でね。あまりにも拘束され、そこで独特の論理が展開され…親たちにも問題があってね、50%くらいがある程度の体罰はあっていい、というワケのわからない思い込みがあってですね。こういう問題は刑事犯罪として捉えればいいんですよ。なんで学校の外でやれば、暴行傷害なのに、学校の中なら「体罰」というオブラートにくるんだ言い方するんですか。野村:今、話されてる中に、重要な問題点がいくつかあってですね、体罰という言葉なんですが、これは生徒が悪いことをした場合にするものと、今回のように何も悪いことをしていないのに、体に何らかの圧力をかけて指導するっていうことは、分けて考えないといけない。平井:今回、橋下市長は桜宮に対して、入試中止をしろとか、教師を全取っ替えしろとか、色んなことを言ってますけど、まあ、議論は分かれるんですが、事の本質は誰が見ても教育委員会だと思うんです。今後、教育委員会をどうするのか、やめさせるのか、校長の権限を増やすのか、そのあたり、やっぱり、やってみないとわからない部分あるんで、僕はいつも言うんですが、橋下市長に一回、大阪を特区にしてやらせてみたらっどうなんですか?それでうまくいかなかったら、戻せばいいんでね、橋下さんがよく言うのは、「人が死ななければ、何をしたっていいんだ」ということなんですが、今回、まさに一人なくなってるワケですよね。この事実は重いので、多少の混乱はあっても、一地域においてはいいと思うんですよ。そういうことやってみないと、方向性が見えないと思うんですが。義家:でも、その実験施行の当事者は子ども達なワケです。失敗は許されないワケですよ。宋:今まで失敗してきたんだから。高濱:誰が見ても失敗してきてるじゃないですか。これまでこんなに長い間、何も変えずに来ててね…平井:今回の一件がそもそも失敗の結果じゃないですか(笑)。義家:いや、これは歴史的経緯を見た上で判断しないといけないんですよ。例えば人事の問題ですよ、動かすのは簡単なんです。しかし、大阪市の高校23あるんですが、全部専門科が多いんですよ。体育科、理数科、英語科、工業、ボランティア、インテリア…つまり、そういうもののために教員を雇ってるワケでね、他に回せないんですよ。だから、人事を全部替えるというなら、科目の枠組み自体を抜本的に変えない限りは、なかなか進んでいかない。やはり、地方教育行政法、これをどう変えていくか、その先にあると思います。高濱:でもね、今回の問題というのは、ずっと長々変わらない問題なワケですよ。原子力村じゃないけど、公教育村っていうのがあって、教師免許持ったらずっとやめなくていいみたいな、ガッチリ守り続けてる世界があって…その中で腐敗も生まれるワケで、やはり、法律どうこうの前に、特区をつくってみてくれ、と。ここで一回実験させてくれ、と。人事権・予算権をちゃんと持たせてもらって、ちゃんと責任もとりますと。それで校長がキチッとマネジメントやる、ってこと、モデル校でもなんでもいいから、どっかで実験しないと。議論してても、いつも、こういう事情があってできません、そんなことばっかり言ってるじゃないですか。野村:橋下市長が、自分がやれるんだったら、こういうふうにしたい、という思いがあっても、それを抑制する仕組みになってて、非常に不満を持ってると思うんです。まったく動かせない組織だからですよ、教育委員会が。何故、教育委員会は動けないのか、そこを分析して、抜本的に改革すべきだと思います。藤原:この20年くらい見てて思うのが、体罰自殺もイジメ自殺もですけど、とにかく今までの日本だと、みんな3か月くらいで忘れちゃう。これが繰り返されてる。そういう意味でも大阪はここで徹底的にやるべきだと思いますね。法律家、国を動かすまで、大阪で徹底的にやる。そのためにも大阪に民間校長をガンガン入れていってほしいですね。
体罰を是としてきたパンドラの匣を開けた橋下。
全柔連にまで波及してきた。