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苫米地英人/必殺びす仕掛人

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古典的な経済学では、経済成長した分以上にマネーストックを増加させると、インフレが起きるとしています。
ところが、これほどまでマネーストック、および信用を増やしている現代に、なぜか悪性のインフレは起きていません。お金がモノに向かっていかず、そのために物価が高騰するということがありません。

では、お金がどこに向かっているのかといえば、別のお金に向かっているのです。
つまり、お金でお金を買い、お金でお金を儲けるということです。
そのため、お金の価値が値上がりしたり値下がりしたりすることは、いたって顕著です。

じつは、現代では経済がインフレだ、デフレだ、と議論すること自体、意味を失っていると私は考えています。
一言だけ言えば、ニューエコノミーがやってきているのです。

なぜ、REIT(不動産を証券化した商品)が普及したかというと、BIS(銀行の自己資本比率維持)規制があったからです。
REITは株式と同様の擬似通貨ですから、不動産開発企業がREITを組成し、発行することは、銀行が信用創造行為を行うことと、本来何も変わりありません。
ところが信用創造行為を行う不動産開発企業には、この規制がかかりません。
BIS規制は、あくまで銀行に課せられた規制であり、銀行以外の企業はその範疇ではないからです。
そこでウォールストリートは、BIS規制の決定以来、金めの物をどんどん証券化する方法を戦略的にとってきたのです。

今後もさまざまな擬似通貨が生み出され、それが世界を駆け巡るマネーの増大を促していくとすれば、世界が直面するのはインフレです。
私たちが「インフレに火がついた」と感覚的に理解できないのは、お金がモノに向かっていないことが理由です。
モノには向かっていきませんが、お金は確実に、モノの根本になっている資源やエネルギーには向かっています。


1990年代後半に日債銀、長銀が破綻し、金融再編の中で日本興業銀行も姿を消してしまいました。
代わりに、通常の銀行が長期社債の発行を認められ、長期資金の供給元という建前が作られましたが、実際はBIS規制でがんじがらめになっており、供給どころかいまだに貸しはがしはつづいています。
これもユーロッパ銀行家の日本つぶしの一環だったのではないかと疑いますが、こうした長期貸付の仕組みが失われ、日本の民間活力はすっかり奪われてしまったわけです。


いくら日銀が国債を購入し銀行に現金を供給しても、市中に通じる銀行の蛇口を誰かが固く閉じてしまえば、それは世の中に流れ出て行きません。
そして、その蛇口を誰が握っているのかといえば、BISなのです。

つまり、日本のマネーストックは、政府にも日銀にも決定権がなく、すでにBIS第2次バーゼル規制下のいまでさえ、すべてBISが決めるに等しい状態になっているわけです。

現在銀行はBIS規制により、企業や個人に貸し出すのではなく、国債を買うしかない状況になっています。

だからこそ私は、日銀が直接に復興国債を引き受けて、財務省が資金を使えばいいのだと主張しました。
日銀と政府のやり取りで完結させれば、そこに銀行は入りませんから、BIS規制も関係ありません。
震災復興という絶好の大義名分がありますから、中央銀行の直接引き受けを咎め立てする声もでなかったことでしょう。


BIS規制により、我々の預金は企業への貸し出し原資になっているのではなく、政府特別会計の収入になっているのです。
それが日本のデフレを長引かせ、いままた震災復興を阻み、震災大不況を誘発しかねない状況を生んでいるわけです。


ヨーロッパの大銀行家は、BIS第2次規制のころから日本国際の格付けを下げさせ、世界の資金が日本に流れ込まないようにしました。
とくに今後に始まるBIS第3次規制以降は、だんだんと、国債の格付けに合わせて自己資本比率が毀損される仕組みに移行していきますから、日本の銀行にドル買い、ユーロ買いの圧力として働きます。
アメリカの実体経済は相当にひどいものですが、それでも米国債の格付けは日本国債よりも上ですから、米国債買いです。
さすがにユーロはボロボロですが、それでもトリプルAのルクセンブルグ国債やドイツ国債の買い圧力が働いています。

つまり、1500兆円の日本の個人資産を吸い上げるために、彼らは意図的に日本国債の格付けを下げているのです。
日本の不況は意図的に仕掛けられており、それはBISがつくっているということです。


誰がどういう数字を見たいのかが決定的な因子であるとすると、経済指標や経済統計を見るときは、世界の経済カーストを見なくてはいけない、ということになります。
世界の経済の頂点にいるのは、欧米の巨大銀行のオーナーである銀行家です。
そして、その下にいるのは、欧米巨大銀行の頭取です。
その下には、IMF、BIS等の国際金融機関がいて、さらにその下に巨大投資銀行頭取クラスがいます。

白川総裁がBISに副議長に選ばれたことから見て、日銀も彼らの軍門に完全にくだったと見るべきでしょう。
こうした姿勢をつづける総務省、日銀は、マネーストックの増減によってインフレとデフレが起こるという事実や、お金の価値は絶対的な基準ではないという事実を私たちから隠し、国際金融資本が望むとおりにひたすら大不況を演出しているように見えます。

世界経済を待ちうける次の展開は、おおよそ想像がつくというものでしょう。
大不況、戦争は、これからも十分に起こりうるということです。

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