Quantcast
Channel: SALUMERA
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2520

橋下市長、生活保護のプリペイドカード支給を実施する

$
0
0
■生活保護のプリペイドカード支給
賛成派が80.1%
2015年01月16日 アメーバニュース

生活保護受給者が、生活保護費をギャンブルなどに使ってしまうことも時々取り沙汰されるが、大阪市が生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するモデル事業を実施すると発表した。

これについて、ヤフーの意識調査で「生活保護費のプリペイドカード支給、どう思う?」という調査を実施中。

2月4日まで行われるこの調査、
「過度な飲酒やギャンブルを防げるので賛成」が43.6%でもっとも多い。
「家計の収支を把握して自立を助けるので賛成」
「生活保護費が適正に支給されてるので賛成」
と合わせた「賛成」派が80.1%となった。

反対派は「使える店が限定されて不便が生じる」がもっとも多く7.0%。
「金銭給付の原則に反して違法なので反対」の6.6%などと合わせて17.6%だ。


■全国初!
Visaプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施します

平成26年12月26日 大阪市長会見全文

司会
それでは、市長定例会見を開始します。
市長、お願いします。

橋下市長
はい、僕からは4点あります。
まず第1点なんですけど、Visaのプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施をします。
生活保護費の支給方法について、家計管理や金銭管理が必要な方への支援ツール、自立支援の一ツールとしましてプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施します。
こういうやり方は全国初ということになります。

近年ですね、金銭管理等の各種生活支援を必要とする被保護者、生活保護受給権者ですね、
とりわけ単身高齢者が増加しておりまして、今後も増加すると見込まれます。
平成25年12月に成立した改正生活保護法では、いろいろな生活保護制度の欠陥をちょっと改善しようという改正生活保護法では、収入、支出その他生計の状況を適切に把握することが受給者の責務として位置づけられました。
自立していくためにはですね、経済的に自立していくためには、まずはきちっと家計を把握するということが肝要なんでしょう。
さらに、ギャンブルや過度な飲酒等に生活費を費消し、自立に向けた生計、生活設計を立てることが困難な方等への支援も求められているということで、今回、三井住友カード株式会社さん、株式会社富士通総研さんの三者において協定を締結しまして、モデル事業を実施するに至りました。

最初に、このVisaのプリペイドカード、これをですね、被保護者に、利用の申し出のあった被保護者に貸与しまして生活保護費のうち生活扶助費の一部、モデル実施においては一律に月額30,000円、
このプリペイドカードの方にチャージをする。
で、この利用者、生活保護受給者の方は、被保護者の方は、Visaカードブランドの加盟店でこのチャージ額、入金額までの買い物、飲食などができると。
本当プリペイドカードですね。
で、これいろいろ確認すると、クレジットカードの場合にはこう、上限設定ができないとか、本人じゃない第三者が、市役所の場合には、これ第三者的な存在ですから、それが利用者に代わってチャージをするというのは、なかなか制度上いろいろ課題があったみたいですけれども、その課題がクリアになったので、こういう新しいモデルでですね、モデル事業として一回生活保護費のですね、こちらは適正支給、で、生活保護受給者、被保護者の方、利用者の方は自立に向けた家計収支の把握と。
これも自立支援の重要な、僕は自立支援の一形態だと思っております。
利用者、一応希望募ってこういう形をとります。

僕も弁護士時代に破産事件よく扱っていましたけども、家計がきちっと把握できないとですね、なかなかこう、生活の方がうまく成り立たないというような実態も見えてきました。
生活保護者の方はそういう方々ばかりではありませんし、いろんな事情で生活保護を受けなければいけない事情もあるんでしょうけれども、ただ、中にはですね、こういう形できちっと自らの家計収支について記録をとりながら、それを把握することが自立支援につながるという人も生活保護受給権者の中にはいますので、利用規模に応じてですね、一応こういう形で一度モデル事業実施して、実際にどういう形で自立支援につながるのか、しっかり検証もしていきたいと思ってます。

今回、半年から1年程度のモデル実施をやります。
その状況を検証しまして、そのあとですね、これはうまくいけそうだということになれば、今は三井住友カードさん、株式会社富士通総研さんなんですけども、ほかの事業者もいろいろ申し出があった場合には、またその事業については、いろんな事業主体については、いろんな事業主体の方に入っていただけるようなそういう制度設計にもしていきたいと思っております。
いずれにせよ、ちょっと全国初の取り組みでもありますので、一回チャレンジをしてみたいと思っています。



■《団体賛同募集》大阪市のプリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望に賛同をお願いします(1月末まで)
2015/01/08
転載元 生活保護問題対策全国会議

大阪市が、昨年末にプリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業を、今年4月から実施する旨発表しました。

しかし、このモデル事業は、生活扶助費の金銭給付の原則に反し、生活保護利用者のプライバシー権等を侵害するなど、様々な問題点があります。

生活保護問題対策全国会議では、以下のとおり、大阪市に対してモデル事業の撤回を求める旨の要望書を提出する予定です。
この要望書に賛同していただける団体を1月末を目処にとりまとめます。
ぜひ多くの団体の賛同をお願いします。

◆プリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書(案)

大阪市長 橋下徹 殿

第1 要望の趣旨
貴市は,2014年12月26日,全国で初めてプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル事業(以下「本モデル事業」という。)として2015年4月から実施する旨発表した。
しかし,本モデル事業には,以下指摘する様々な問題点があり,到底容認できないので,速やかに撤回し,実施することのないよう要望する。

第2 要望の理由
1 金銭給付の原則(生活保護法31条1項)に違反する

救護法(施行令7条)が金銭給付と現物給付の併用を規定していたのに対して,現行生活保護法31条1項が「生活扶助は,金銭給付によって行うものとする」と規定して,特に金銭給付主義を原則的に採用したのは,経済統制が大幅に解除された今日においては,金銭給付により各人の自由購入に任せることが適当であるが故とされている。
(小山進次郎「改訂増補・生活保護法の解釈と運用」442頁)

しかし,プリペイドカード(いわゆる電子マネー)は,「その金額に応ずる対価を得て電磁的に記録された情報であって,その記録者との契約関係に基づき一定の範囲で金銭債務の弁済としての効力を有するもの」であって ,金銭(貨幣)そのものではないから,プリペイドカードによる支給が「金銭給付」にあたらないことは明らかである。

また,生活保護法31条1項但し書は,
「これによることができないとき」(施設等において寝具等の物品を貸与する場合等),

「これによることが適当でないとき」(物品を一括大量購入することが非常に有利である場合とか,一般には入手し難い物品を給与する場合等),

「その他保護の目的を達するために必要があるとき」(被保護者の性状,給付するものの性質等からみて現物給付でないと保護の目的を達しがたい場合)

には現物給付によることができる旨規定しているが,一般的に生活扶助費をプリペイドカードによって給付する本モデル事業は,これらの例外的場合にあたらない。

そもそも「現物給付」とは,
「衣料,食糧その他生活必需品の給貸与及び移送,
理髪,入浴又は被服修理等を行うこと,
介護等の役務の提供」
(前掲小山444頁)
など,特定の物品の給貸与又は特定のサービスの提供であるとされている。

プリペイドカードの提供は,このいずれにも該当しないから,「現物給付」としても許されないことが明らかである。

そうすると,プリペイドカードによる生活扶助費の支給は,金銭給付の原則を定めた生活保護法31条1項に真っ向から違反することが明らかである。
これはプリペイドカードが「金銭給付」にも「現物給付」にもあたり得ないことから一義的に導かれる結論であって,生活保護利用者の承諾を得られたからといって,その違法性が治癒されるという性格のものではない。

自民党などは,生活扶助・住宅扶助等の現物給付化の法改正案を提案しているが ,本モデル事業は,本来法改正をしなければなし得ないことを,法改正を行うことのないまま強行しようとするものであって,法令遵守精神の欠如もはなはだしいものと言わざるを得ない。

2 プライバシー権・自己決定権(憲法13条)の侵害である

中嶋訴訟・福岡高等裁判所平成10年10月19日判決は,
「憲法25条の生存権保障を具体化するものとしての生活保護制度は,被保護者に人間の尊厳にふさわしい生活を保障することを目的としているものであるところ,人間の尊厳にふさわしい生活の根本は,人が自らの生き方ないし生活を自ら決するところにあるのであるから,被保護者は収入認定された収入はもとより,支給された保護費についても,最低限度の生活保障及び自立助長といった生活保護法の目的から逸脱しない限り,これを自由に使用することができるものというべきである。」
としている 。

ところが,保護費がプリペイドカードによって支給されることになると,生活保護利用者がいつ,どこで,何を購入したのか,食生活から趣味嗜好に至る日常生活のすべてが福祉事務所に把握され,生活全般を管理・支配され得ることにつながる。
これは,上記の判例に反するのみならず,生活保護利用者のプライバシー権・自己決定権(憲法13条)に対する著しい侵害である。

なお,本モデル事業は,被保護者の「申し出」を得て行うものとされていることから,貴市は,プライバシー権等の放棄がなされていると主張するかもしれない。
しかし,後述のとおり,プリペイドカードによる保護費の支給は生活保護利用者にとって不便不利益なだけであって何らの利益にもつながらない以上,任意かつ真摯な「申し出」が生活保護利用者の側から自発的に行われることは想定し難い。
異論をはさまない生活保護利用者をケースワーカーが選別して,その圧倒的な力関係の差を利用し,「申し出」に名を借りた事実上の強制が行われることが容易に想定されるところである。
 
3 被保護者の日常生活に著しい不便・危険が生じる

プリペイドカードは,通貨とは異なり,当該カードの加盟店でしか利用できない。
生活保護利用者それぞれの地域で利用している馴染みの小規模な商店や食堂などでは利用できない事態が多々起こりえる。
特に,生活保護利用者がアレルギー(化学物質過敏症等を含む),
糖尿病等の疾病や障害をもつ場合,
例えば,アレルギーのため無農薬・無添加の食材を購入するなど,疾病・障害特性に合わせ,細心の注意を払って食材,衣服,洗剤などの生活用品を選択,利用することで,かろうじて生命,健康を維持する者が多い。
そして,こうした生活用品は,特定の店舗,市場,生産者等を通じてしか購入できない場合が多いため,本モデル事業導入により生活用品購入の選択肢が狭められることになれば,こうした生活保護利用者の生命や健康の安全を即時かつ直接脅かすことになる。

このように本モデル事業は,生活保護利用者の日常生活に著しい不便や危険を生じさせるものである。

この点,貴市自身が,2013年9月4日の時点においては,
「本市におきましても保護費の電子マネー化やクレジットカード払いが可能かどうかの検討を行いましたが,購入先が限定され,近隣の小規模店舗では使用できない可能性があることなどの課題があると考えています。」
としていたにもかかわらず ,わずか1年で認識を180度転換させ本モデル事業の実施に踏み切ったことは不可解というほかない。

4 巨大企業による国家的貧困ビジネスの始まりである

本モデル事業は,三井住友カードと富士通総研が提案してきた事業を貴市が採用したものである。
モデル事業の協定先である上記2社とVisa,NTTデータは,

「米国では既に児童手当や災害手当といった各種給付がVisaプリペイドによって給付」されており,

「2012年には年間100億ドル以上がプリペイドカードにより給付」されているとして,

「今回のモデル事業を通じ,大阪市同様に全国の自治体への展開を進め,(略)政府の日本再興戦略における具体策の一つである,公的分野での電子決済の利用拡大を含むキャッシュレス決済の普及を目指」すとしている。

上記4社は,200万人の生活保護利用者を新たな巨大市場として獲得することを皮切りとして,さらにはアメリカのように児童手当その他の公的給付についてもプリペイドカードによる支給を実現することによって,爆発的に市場を拡大していくことを目論んでいるのである。
その目的は,もちろん巨額の手数料収入を得ることによる利潤の追求である。

アメリカでのSNAP(旧フードスタンプ。補足的栄養支援プログラム)が助けているのは,困窮したワーキングプアでも失業者でも,零細農家でもなく,売上げが入る大手食品業界と,偏った食事が生む病気が需要を押し上げる製薬業界,カード事業を請け負う金融業界の三者であるという報告もある。
(堤未果「(株)貧困大国アメリカ」11頁)

本モデル事業によって,既に述べたとおり,生活保護利用者が利益を得ることがないだけでなく,貴市をはじめとする自治体も何ら支出を減らすことはできず,むしろ委託手数料等の支出を増やすことにつながりかねない。
利益を得るのは大手カード会社だけであり,まさに国家的規模で福祉給付を利潤の源として食い物にする貧困ビジネスの始まりである。

5 プリペイドカードの支給はアルコールやギャンブル依存症の対策にはならない

貴市は,本モデル事業実施の理由として,
「ギャンブルや過度な飲酒等に生活費を費消し,自立に向けた生活設計を立てることが困難な方等への支援」
をあげている。

しかし,プリペイドカードを支給して使途を把握し,不適切な使途があれば問い質して叱責したからといって,アルコールやギャンブルの問題が解消・解決するというような簡単な話ではない。
依存症は病気なのであるから,当事者に寄り添った支援を通じて信頼関係をつくり,専門クリニックへの通院や自助グループへの通所などにつなげ,当事者自身が自分で自分の生活を日々コントロールしていく力を身に着けていくための,地道で息の長い援助が不可欠であり,そのためには,恒常的に400名規模の人員不足が生じているケースワーカーの大量増員と専門性の向上こそが必要である。

本モデル事業は,生活保護利用者に対する地域社会のスティグマ(偏見)と生活保護利用者の抑圧感を助長し,社会的に排除された生活保護利用者がいっそうギャンブルなどへの依存を強めることが強く懸念される。

なお,そもそも本モデル事業は,単身者で約8万円の保護費のうち一部(3万円)のみをプリペイドカード支給するというものであり,残りの現金5万円で飲酒やギャンブルをすれば把握のしようがないのであるから,保護費の使途を把握してギャンブルなどを抑止するという説明自体が論理破綻している。

したがって,本モデル事業の本質は,当事者に対する支援を名目・隠れ蓑にしながら,真の目的は,生活保護利用者を管理支配して制度利用から締め出すことによって自治体の保護費を減らすことにあることが明らかである。

6 生活保護利用者だけでなく地域の小規模商店や児童手当・年金等の公的給付受給者にとっても死活問題である

3で述べたとおり,プリペイドカードが加盟店でしか使えないということは,加盟店契約をしていない地域の小規模な商店や食堂等の側から見れば,大切な顧客を大規模チェーン店等に奪われ,経営の基盤を脅かされることを意味している。

特に,生活保護利用者が多く住む地域では,顧客を奪われて廃業を迫られる小規模店も少なからず出てくる一方,大手のコンビニやスーパーのチェーン店が出店数や規模を拡大することが予想される。
これは地域コミュニティの衰退にも,つながる問題である。

また,橋下市長は,会見で,「本来ならば全員,一定額についてはカード利用にしたほうがよい」旨述べており,将来的には希望者だけではなく生活保護利用者全員についてプリペイドカードによる支給を行うことを示唆している。

また,同市長は,「生活保護制度の財源が税であることから,支出について適正さが求められることの一環として,受給者にこれくらいの負担を負ってもらっても然るべきである」旨も述べている。
その理屈からすれば,生活保護に限らず,児童手当,児童扶養手当,老齢年金,障害年金などの税を財源とする公的給付については,すべてプリペイドカードによって支給することが一貫していることになる。
実際,4で述べたとおり,三井住友カード等の発案企業は,そのようなアメリカ型の社会の実現を望んでいるのであり,これは決して杞憂とは言えない。

したがって,本モデル事業は,この国で暮らすすべての人にとって対岸の火事ではありえないのであり,その意味からも現段階において撤回されることが強く求められる。


■生活保護のリアル
みわよしこ

転載元 ダイヤモンド・オンライン

2014年12月26日、大阪市長・橋下徹氏は、生活保護の生活扶助(生活費相当分)を一部プリペイドカードで支給するモデル事業について発表した。
賛否とも大きな反響を呼んでいるこのモデル事業は、どのような問題を解決すると期待されているのだろうか?
その期待は、実現するだろうか?
語られていない弊害は、どのようなものだろうか?

◆大阪市「生活扶助プリペイドカード化」
モデル事業への不思議な期待

昨年末2014年12月26日、大阪市長・橋下徹氏は「御用納め」の日に開催された定例記者会見において、生活保護の生活扶助(生活費相当分)を一部プリペイドカードで支給するモデル事業について発表した。

橋下氏は、

「生活保護費の支給方法について、家計管理や金銭管理が必要な方への支援ツール、自立支援の一ツールとしましてプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施します」

と述べ、現状の問題点を、

1.金銭管理等の各種生活支援を必要とする生活保護利用者、とりわけ単身高齢者が増加

2.2013年12月に生活した改正生活保護法で、収入・支出その他生計の状況を適切に把握することが受給者の責務と位置づけられた

3.経済的に自立していくためには家計を把握することが肝要

4.ギャンブルや過度な飲酒等に生活費を費消し、自立に向けた生計、生活設計を立てることが困難な人の支援が必要

と指摘した。

橋下氏によれば、このモデル事業は、希望者に対して生活扶助のうち月当たり3万円をプリペイドカードで支給するものであるという。
橋下氏はさらに、

「僕も弁護士時代に破産事件よく扱っていましたけども、家計がきちっと把握できないとですね、なかなかこう、生活の方がうまく成り立たないというような実態も見えてきました。
生活保護者の方はそういう方々ばかりではありませんし、
(略)こういう形できちっと自らの家計収支について記録をとりながら、それを把握することが自立支援につながるという人も(略)いますので、一度モデル事業実施して、実際にどういう形で自立支援につながるのか、しっかり検証もしていきたい」

と述べ、今後、半年から1年程度のモデル事業に

「ちょっと全国初の取り組みでもありますので、一回チャレンジをしてみたい」

と意欲を示す。

会見する橋下氏のバックには、

「全国初!生活保護費をプリペイドカードで支給<モデル事業>」

という文字が踊っていた。


ネット世論でも、

「自分たちの払った税金が、生活保護利用者の酒やギャンブルに使われなくなる」
「公金である以上、使途は明確にされるべき」
「不正受給対策としても期待できる。生活扶助が反社会的勢力に流れなくなる」

などの期待の声が大きい。
なお、会見での橋下氏の発言全文は、大阪市サイト内で読める。

◆カード会社が大阪市に提案

2015年1月8日、生活保護問題対策全国会議は、「プリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書(案)」を公開した。
この要望書には、大阪市の今回の生活扶助支給を一部プリペイドカード化する案の問題点のほとんどが網羅されているのだが、そもそも、このモデル事業はどういう経緯によって開始されたのだろうか?

前出の要望書(案)によれば、経緯は下記のとおりである。

《本モデル事業は,三井住友カードと富士通総研が提案してきた事業を貴市が採用したものである。
モデル事業の協定先である上記2社とVisa,NTTデータは,「米国では既に児童手当や災害手当といった各種給付がVisaプリペイドによって給付」されており,『2012年には年間100億ドル以上がプリペイドカードにより給付』されているとして,『今回のモデル事業を通じ,大阪市同様に全国の自治体への展開を進め,(略)政府の日本再興戦略における具体策の一つである,公的分野での電子決済の利用拡大を含むキャッシュレス決済の普及を目指』すとしている》
(要望書)

決して富裕ではない人々にプリペイドカードを利用させても、その人々それぞれは多額の消費を行うことはできない。
三井住友カード・富士通総研・Visa・NTTデータの目的は、どこにあるのだろうか?

《上記4社は,200万人の生活保護利用者を新たな巨大市場として獲得することを皮切りとして,さらにはアメリカのように児童手当その他の公的給付についてもプリペイドカードによる支給を実現することによって,爆発的に市場を拡大していくことを目論んでいるのである。
その目的は,もちろん巨額の手数料収入を得ることによる利潤の追求である》
(要望書)

もしも今回、カードの発行手数料が生活保護費から支出されるのであれば、これはまぎれもない「生活保護の不正受給」となる。
しかし筆者の得た情報では、カード会社は発行手数料を利用者にも大阪市にも請求しない方針だそうだ。
それでもカード会社は、小売店から手数料を得ることができる。
手数料は明らかにされていないが、小売店から物品をクレジットカードで購入した場合、クレジットカード会社が得る手数料は商品金額の3~5%である。
もしも将来、このカードが全国約220万人の生活保護利用者に配布されたとすれば、カード会社に巨額の利益がもたらされることは間違いない。
しかも関連しているIT企業は、生活保護利用者の日常や消費に関する貴重な「ビッグデータ」を得ることができる。

なお、大阪市に提案を行った企業および大阪市が先行例として参考にしていると思われる米国の「SNAP(過去に「フードスタンプ」と呼ばれていた低所得層向け給付のプリペイドカード版)」は、
堤未果氏の著書「(株)貧困大国アメリカ」によれば、単身者に対する金額は、1ヵ月あたり概ね120ドル。
料理のスキルと栄養学に関する基本的な知識があれば、自炊ならば栄養バランスのとれた食事を組み立てられる金額だ。
しかし充分な教育を受けていないことの多い低所得層は、油脂・糖質の塊であるスナック類・インスタント食品・甘い飲料や菓子類などの「ジャンクフード」を多く購入するため、「子どもの糖尿病が激増」などの問題を引き起こしている。
このため、「SNAPでのジャンクフード購入を不可能にする」という州法案が10州の議会に提出されたものの、まったく成立していない。

堤氏のインタビューに、医師は「食品業界が束になって反対の圧力をかけてくる」からだと答える。
スーパーマーケットチェーンの大きな収入源の一つとなっているSNAPは、米国の財政難の中、利用が抑制されるどころか拡大されている。
「SNAPの利用をより拡大させる」を目的の一つとする移民受け入れ拡大も行われている。
司法監視団体幹部は「国家ぐるみの貧困ビジネス」と厳しく批判する。
(以上、同書プロローグによる)

◆ビッグデータに期待する必要は本当にあるのか?

「でも、得られるビッグデータが、不正受給をはじめとする生活保護の問題を解決してくれるかもしれない」

と期待する向きもあるかもしれない。

たとえば、海部美知氏の著書『ビッグデータの覇者たち』(講談社現代新書)には、もしも不正受給をデータによって洗い出すことができれば、

「数の多い「入口」部分部分の負担(筆者注:生活保護の申請時点で行う調査)を軽くし、絞りこまれた少数のケースだけを後から厳しく調査することで、相談員の業務負担も軽くなり、住民サービスも向上するはずで、ドイツの事例(筆者注:失業給付の不正受給)でもこうした効果が報告されています」
(同書173ページ)

とある。
しかし、ここで挙げられているドイツの事例は、

「失業給付を受給している人が、同時に業務関連の事故に関する何らかの申請を行っている」

というものである。
失業給付が何に消費されているかは関係ない。
日本においても、生活保護の不正受給のほとんどは就労所得隠し・資産隠しである。
月々の保護費が何に消費されるかとは関係ない。
生活扶助の一部プリペイドカード化によって得られる「ビッグデータ」が、生活保護制度の外で行われる不正受給に対して何の対策になりうるというのだろうか?

もしかすると、ビッグデータによって、「不正受給する人の消費性向にありがちなパターン」のいくつかを洗い出すことは、可能かもしれない。
しかし、だからといって、不正受給と無関係に生活を送っている大多数の生活保護利用者のプライバシーを犠牲にする必要はあるのだろうか?

メリットとデメリットに関する慎重な議論が必要だと筆者は思う。

◆プリカ化は問題を何一つ解決せず
デメリットのみで法律違反

本記事冒頭で引用した橋下氏の会見内容では、プリペイドカード化のメリットが4点主張されていた。
これらの問題がプリペイドカード化でどう解決するのか、一点ずつ見てみたい。

1.金銭管理等の各種生活支援を必要とする生活保護利用者、とりわけ単身高齢者が増加

そこに述べられている「生活支援」の充実こそが、本質的かつ最良の解決である。
「上限金額が設定されたプリペイドカードなら使ってよろしい」では、「金銭管理ができない」の解決にはならない。

2.2013年12月に生活した改正生活保護法で、収入・支出その他生計の状況を適切に把握することが受給者の責務と位置づけられた

3.経済的に自立していくためには家計を把握することが肝要

自ら家計を把握することは、まずは「レシートを保存しておく」を習慣化、可能であれば「家計簿をつける」も、といったことで充分に行える。

そもそもプリペイドカードは、対応している店舗でしか使用できない。
生活保護利用者たち「御用達」の店舗には、野菜の無人販売スタンド・衣料や生活用品のリサイクルショップなど、プリペイドカードに対応する見込みの低いものが数多く含まれている。

これまでに積み重ねられてきた節約の努力は、まぎれもない「経済的に自立していく」ための努力ではないのだろうか? それをプリペイドカード化で「水の泡」にすることは、どういう「自立助長」なのだろうか?

4.ギャンブルや過度な飲酒等に生活費を費消し、自立に向けた生計、生活設計を立てることが困難な人の支援が必要

このような人々に対しては、なるべく早く専門的医療へとつなぐことこそが「正解」。
手段が何であれ、消費そのものを管理することは問題を悪化させるばかりだ。日本ではすでに、

「医療機関での医療→治療施設→中間施設→支援を受けつつの地域生活」

というルートが確立され、ノウハウも蓄積されている。
ただし、施設もスタッフも不足しているため、増設・増員は必須である。

以上、橋下氏の期待は、生活扶助プリペイドカード化では何一つ実現されそうにない。
市民の「不正受給が減るならば」という期待にも応えてくれそうにない。
なおかつ、米国の「SNAP」という先行例に見るとおり、多大なリスクがある。
ここまで「メリットが少なくデメリットが多大」と判明しているものは、「試行」といえども行うべきではないのではないだろうか?

しかも、生活扶助の現金給付原則を定めた生活保護法第31条に違反している。
詳細は、生活保護問題対策全国会議の要望書を参照していただきたい。

メリットはなく、デメリットのみ、しかも法律違反。
それでも推進しなくてはならない理由は、筆者には何一つ見つけられない。




by 橋下徹@t_ishin

●『 RT @corosanta01: 人間はみんな保守的にできていて、変化を先天的に恐れるようにできていると思います。』

橋下市長:
そうですね。
でも今の危機を乗り越えるためにリスクをとれ、と自称インテリは口では言うんですよね。
そして実際にチャレンジすると反対。
これが今の日本。変えなければ。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2520

Trending Articles